・・・これが、たゞちに記録となって、将来の歴史を編成するのである。 誠実に、生きるものは、もとより記録を残すと否とについて考えない筈だ。たゞ俗人のみが、すべてに於て、計画的であるであろう。同じく、芸術は、作家が、自から生きることの炎だ。その人・・・ 小川未明 「自由なる空想」
・・・主題の分析、選択、編成という過程にはすべての芸術に共通なものがなければならないからである。 まず手近なところでたとえば生け花の芸術を考えてみる。この場合は簡単に口で言われるような「主題」はないかもしれないが、花を生ける人の潜在意識の中に・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・第一、実地ではこんなに演奏者を八方から色々の距離と角度で眺めることは不可能であるが、そればかりでなく映画のカメラは吾らの眼の案内をして複雑な管弦楽の編成の内容を要領よく解明してくれる。曲の各部をリードしている楽器を時々に抽出してその方に吾々・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(5[#「5」はローマ数字、1-13-25])」
・・・本来ならば実に退屈で到底見ていられそうもない筋と材料を使って、そうしてちっとも退屈させないで緊張をつづけて行くのは映画としての編成の上に至るところ非常に気のきいた取り扱い方があるおかげであろう。そうして、それが簡単に一口に説明のできないよう・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・これは偶然なのか、それともプログラム編成者の皮肉なのか不明である。 凡児が父の「のんきなトーさん」と「隣の大将」とを上野駅で迎える場面は、どうも少し灰汁が強すぎてあまり愉快でない。しかし、マダムもろ子の家の応接間で堅くなっていると前面の・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」
・・・折詰の飯に添えた副食物が、色々ごたごたと色取りを取り合せ、動物質植物質、脂肪蛋白澱粉、甘酸辛鹹、という風にプログラム的に編成されているが、どれもこれもちょっぴりで、しかもどれを食ってもまずくて、からだのたしになりそうなものは一つもない。・・・ 寺田寅彦 「マーカス・ショーとレビュー式教育」
・・・ もしまた、いろいろな自然の雑音を忠実に記録し放送することができる日が来れば、ほんとうに芸術的な音的モンタージュが編成されうるであろうが、現在のような不完全な機械で、擬音のほうがかえって実際に近く聞こえるような状態では到底理想的なものは・・・ 寺田寅彦 「ラジオ・モンタージュ」
・・・ ここで考えているような立場からすれば、普通の文学的作品は一種の分析であるのに対して連句は一種の編成であるとも言われる。前者は与えられた一つのものに内在する有機的構造を分析展開して見せるに対して、後者は与えられた離れ離れの材料からそれに・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
・・・ 新聞にいうように、十万とか十五万の武装警官を作るということ、あれは日本の軍隊の再編成です。それから新聞で御覧のとおり、非常に今の警官はピストルが上手で殺すことがうまく、昔の警官はサーベルをがちゃがちゃさせて躓いてびっくりしていたが、い・・・ 宮本百合子 「浦和充子の事件に関して」
・・・ 今日学生生活はあらゆる面で再編成されていて、学生といえば苦労のない暢気な時代という概念は根柢から変って来ている。学生の二十四時間は、その第一時から第二十四時迄が、何かしら社会的な視線のもとにさらし出されているような感じになって来た。学・・・ 宮本百合子 「家庭と学生」
出典:青空文庫