・・・その朝、隣組の義勇隊長から義勇隊の訓練があるから、各家庭全員出席すべしといって来た。「どんな訓練ですか」「第一回だから、整列の仕方と、敬礼の仕方を教えて、あとは講演です」 と、いう。「僕は欠席します。整列や敬礼の訓練をしたり・・・ 織田作之助 「終戦前後」
つめたいいじの悪い雲が、地べたにすれすれに垂れましたので、野はらは雪のあかりだか、日のあかりだか判らないようになりました。 烏の義勇艦隊は、その雲に圧しつけられて、しかたなくちょっとの間、亜鉛の板をひろげたような雪の田・・・ 宮沢賢治 「烏の北斗七星」
・・・一中隊はありますよ。義勇中隊です。」「やっぱりあんなでいいんですか。」「構いませんよ。それよりまああの梨の木どもをご覧なさい。枝が剪られたばかりなので身体が一向釣り合いません。まるで蛹の踊りです。」「蛹踊とはそいつはあんまり可哀・・・ 宮沢賢治 「チュウリップの幻術」
・・・皇室に対して忠であることは、「一旦緩急あれば義勇公に奉ずる」ことであった。対内的でなくして対外的であった。徳川時代の主従関係のように個人的なものではなく、対国家の関係であった。これだけの相違が我々父子の間に存している。その事をまず小生は前記・・・ 和辻哲郎 「蝸牛の角」
出典:青空文庫