・・・ 月島丸が沈没して、その捜索が問題となった時に、中村先生がいろいろの考案をされて、当時学生であったわれわれがお手伝いをして予備実験をやった。なんでも大きなラッパのようなものをこしらえて、それをあの池の水中に沈め、別の所へ、小さなボイラー・・・ 寺田寅彦 「池」
・・・従来の盲探しの手数のかかる方法に代わるに簡単で確実な合理的方法を考案してこれを実地に応用し良好の成績を収めた。現在我邦でおよそ汽船を造っている限りの工場で君の方法の行われていないところはないそうである。これと似た問題としては電気扇の振動や雑・・・ 寺田寅彦 「工学博士末広恭二君」
・・・これをなるべく忠実に正確に記録すべき器械の考案や、また器械が理想的でない場合の記録の判断や、そういう事が主要な問題である。それから一歩を進むれば、震源地の判定というような問題に触れる事にはなるが、更にもう一歩を進めるところまで行く暇のないの・・・ 寺田寅彦 「地震雑感」
・・・いちばん延び過ぎた所から始めるという植物の発育を本位に置いた考案もあった。こんな事にまで現代ふうの見方を持って来るとすれば、ともかくも科学的に能率をよくするために前にあげた第一の要求を満たす方法を選んだほうがよさそうに思われた。能率を論ずる・・・ 寺田寅彦 「芝刈り」
・・・は到底引き延ばせるはずがないので、それで、この嫌疑をなるべく濃厚に念入りにするために色々と面倒な複雑なメカニズムが考案されなければならないのである。こういう考案をするのは丁度われわれが何かちょっとした器械でも考案する場合といくらか似たところ・・・ 寺田寅彦 「初冬の日記から」
・・・そして若い柔らかい頭の中から、美に対する正しい感覚を追い出すためにわざわざ考案されたような、いかにもけばけばしい、絵というよりもむしろ臓腑の解剖図のような気味の悪い色の配合が並べられている。このような雑誌を買う事のできないほどに貧乏な子供が・・・ 寺田寅彦 「丸善と三越」
・・・故に世上有志の士君子が、その郷里の事態を憂てこれが処置を工夫するときに当り、この小冊子もまた、或は考案の一助たるべし。一、旧藩地に私立の学校を設るは余輩の多年企望するところにして、すでに中津にも旧知事の分禄と旧官員の周旋とによりて一校を・・・ 福沢諭吉 「旧藩情」
・・・怱々筆をとって西洋書中の大意を記し、他日諸君の考案にのこすのみ。明治三年庚午一一月二七夜、中津留主居町の旧宅敗窓の下に記す福沢諭吉 福沢諭吉 「中津留別の書」
・・・者が特にこの大切なる一点をば軽々看過してあたかも不問に附する者多きを見て窃かに怪しむのみか、その無識を冷笑するほどの次第なれば、大いに婦人の地位を推してこれを高処に進め、以て男子に拮抗せしめんとするの考案なきにあらず。徹頭徹尾、今の婦人と今・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
・・・一日の中、大部分は、其部屋の中に生活するのですから、客間、食堂、寝室などと云うものは、皆、勉強部屋での、深い緊張を緩める処、やや疲れた頭の慰安処として、考案されなければならないのです。 私は、直射する東や南の光線は大嫌いですから――・・・ 宮本百合子 「書斎を中心にした家」
出典:青空文庫