・・・ではない。ざっと周囲を見渡した所、僕の知っている連中でも大抵は何かを恐れている。勿論外見は恐れてはいない。内見も――内見と言う言葉はないかも知れない。では夫子自身にさえ己は無畏だぞと言い聞かせている。しかしやはり肚の底には多少は何かを恐れて・・・ 芥川竜之介 「出来上った人」
・・・親も代表しておらなければ、子も代表しておらない、夫子自身を代表している。否夫子自身である。 そうすると、人間というものはそういう風に二通りを代表している――というと語弊があるかも知れませんが――二通りになるでしょう。其処です其処です、そ・・・ 夏目漱石 「模倣と独立」
・・・論者その人の徳義薄くして、その言論演説、もって人を感動せしむるに足らざるか、夫子自から自主独立の旨を知らざるの罪なり。天下の風潮は、つとに開進の一方に向いて、自主独立の輿論はこれを動かすべからず。すでにその動かすべからざるを知らば、これにし・・・ 福沢諭吉 「徳育如何」
出典:青空文庫