・・・葱五六本、茶碗一杯の胡麻醤油を買って来て二人で食べる。「彼等のこの数年間の同居生活は、鴛鴦のようだと云っていけなければ、一対の小さな雀のようであったと云えよう。」 ところが或る日のことであった。午砲の鳴る頃、春桃は、いつもの通り屑籠を背・・・ 宮本百合子 「春桃」
・・・とつぶやきながら、うなだれている禰宜様宮田の胡麻塩の頭を眺めて、彼女は途方もない音を出して、吐月峯をたたいた。三 海老屋の年寄りは、翌朝もいつもの通り広い果樹園へ出かけて行った。 笠を被り、泥まびれでガワガワになった・・・ 宮本百合子 「禰宜様宮田」
・・・現代反動政府とそれを支配しているブルジョアとは、あらゆる機会に坊さん、いわゆる道徳家牧師を動員して世界経済恐慌によって起るプロレタリアの攻勢を何とかして胡麻化そうと、かかっているのです。反宗教運動は、プロレタリア文化運動の一翼として、当然起・・・ 宮本百合子 「反宗教運動とは?」
・・・ 南京豆と胡麻畑の奥に、小さい藁葺屋根の家が見えた。われわれ一行三人が、前庭に入って行くと、「よう!」 低い窓からこっちを見て勢のいい声をかけたのは主人××君だ。土間で手拭をかぶって働いてたお神さんが、「さ、おあがりな」・・・ 宮本百合子 「飛行機の下の村」
・・・をそのまま利用して、今日演説会へ来るものには種を袋へ入れてやったり、胡麻をやったり、タバコ、マッチという機微をうがった餌を出している。東京ではさすがにそれをやらず、地方でやっている。私たちは婦人の政治活動の第一歩が、昔からのきたならしいやり・・・ 宮本百合子 「婦人の一票」
・・・子供がいれた胡麻粒みたいにその間をはねてる。路傍演説なんぞ聴く女はほとんどなかった。 池では貸ボートが浮いてる。一人や二人でのっているのはごく少い。五六人ずつで、水の上を動いて低い橋かげをくぐる時なんか歓声をあげている。 ハイド・パ・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
出典:青空文庫