・・・こういう煙に関して研究すべき科学的な問題が非常に多い。膠質化学の方面からの理論的興味は別としても実用方面からの研究もかなり多岐にわたって進んではいるがまだ分らないことだらけである。国家の非常時に対する方面だけでも、煙幕の使用、空中写真、赤外・・・ 寺田寅彦 「喫煙四十年」
・・・これは化膿しないためだと言うが、墨汁の膠質粒子は外からはいる黴菌を食い止め、またすでに付着したのを吸い取る効能があるかもしれない。 寒中には着物を後ろ前に着て背筋に狭い窓をあけ、そうして火燵にかじりついてすえてもらった。神経衰弱か何かの・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・ひと口に言えば自然の風物にわれわれの主観的生活を化合させ吸着させて自然と人間との化合物ないし膠質物を作るという可能性である。これがなかったらこの魔術は無効である。しかしこれだけの理由ではまだ不十分である。もう一つの重大な理由と思われるのは日・・・ 寺田寅彦 「俳句の精神」
・・・化学的の分析と合成は次第に精微をきわめて驚くべき複雑な分子や膠質粒が試験管の中で自由にされている。最も複雑な分子と細胞内の微粒との距離ははなはだ近そうに見える。しかしその距離は全く吾人現在の知識で想像し得られないものである。山の両側から掘っ・・・ 寺田寅彦 「春六題」
出典:青空文庫