・・・われながら呆れて、再び日頃の汚濁の心境に落ち込まぬよう、自戒の厳粛の意図を以て左に私の十九箇条を列記しよう。愚者の懺悔だ。神も、賢者も、おゆるし下さい。 一、世々の道は知らぬ。教えられても、へんにてれて、実行せぬ。 二、万ずに依怙の・・・ 太宰治 「花吹雪」
・・・葦の自戒 その一。ただ、世の中にのみ眼をむけよ。自然の風景に惑溺して居る我の姿を、自覚したるときには、「われ老憊したり。」と素直に、敗北の告白をこそせよ。 その二。おなじ言葉を、必ず、二度むしかえして口の端に出さぬこと。・・・ 太宰治 「もの思う葦」
・・・一定の自戒をもち、それを守ることそのものを生活の目的のようにして生きている梅雄に友人団が「ただ君の情熱は中ぶらりんで方向がないね」といい、作者はその評言の社会的な正当性を認めている。丁度その評言の真只中に全篇の終りは曲線を描いて陥りこんでし・・・ 宮本百合子 「十月の文芸時評」
・・・、やむを得ない応急的なあわただしさの反面に、日本の文化はもっともっと落着いて、蘊蓄を深く、根底から確乎とした自身の発展的推進力を高めて行かなければ、真に世界文化の水準に到達することは困難である、という自戒を感じているのではないかと思う。・・・ 宮本百合子 「「どう考えるか」に就て」
出典:青空文庫