・・・ 軍事行動邁進の三年という年月に、ジャーナリストたちの自立も弱められた。新聞は、もう再度の文化暴圧にたいして、発言しなかった。進歩的な作家たちも、それについて理性からの批判は示しえなかった。舟橋聖一氏がこの間発表した「毒」という小説・・・ 宮本百合子 「ある回想から」
・・・わたしたちの求めているのが民族の平和と自立であり、生活の安定と人間らしい文化のよろこびである以上、自分たちの目標から目をはなさず、希望を実現させるあらゆる可能のためにわたしたちに出来るところから尽力してゆかなければうそだと思う。 これま・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・したがって、西欧の近代文学の中軸として発展してきた一個の社会人として自立した自我の観念も、日本ではからくも夏目漱石において、不具な頂点の形を示した。リアリズムの手法としては、志賀直哉のリアリズムが、洋画史におけるセザンヌの位置に似た存在を示・・・ 宮本百合子 「歌声よ、おこれ」
・・・これに対して、物価調節、各家庭に対する節約宣伝のような、やや消極的方面の問題、また積極的には女性の自給自立、労銀等の問題から、根本に近い、社会主義上の諸問題が、惹起されます。これ等は、おもに流動する貨幣のみちびきかた、適当な配分を考究して、・・・ 宮本百合子 「男…は疲れている」
・・・は、知られているとおり、十六歳の学問好きな、そして母から伝えられた根気よさと自立を愛する精神をもつ少女ジュヌヴィエヴが、第一次のヨーロッパ大戦前のフランスの中流生活の常套の中で、俗っぽく偽善的な父親が強いている「良俗」に反抗し、自分の独立と・・・ 宮本百合子 「結婚論の性格」
・・・、幾年かのちのまたこうした場合に立ちいたって、ついうっかり自分たちの現実判断をとりちがえ、植民地人民の世論調査によれば、などととんだ利用価値を発揮したりするあわれさを示さないように、わたしたちは手堅い自立の訓練を身につけなければならない。・・・ 宮本百合子 「現代史の蝶つがい」
・・・在しているけれども、その厭わしさを、とりあげてよくよく調べてみれば、日本人の精神の本質がそういうものであるというよりは、近代の国際資本の競争におくれて立ちまじった日本の資本主義支配者たちが、世界の間に自立的な伝統と立場とを確立していず、いつ・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・―― 書籍の※書籍をこしらえようとするような文化の非自立性が進行している。しかもこの現象は、探求されている日本文学史上のあらゆる近代性確立の問題の根蔕において繋がっているのであって、買うのはどういう人々だろう。荷風、潤一郎は昨今では闇屋・・・ 宮本百合子 「豪華版」
・・・―― 十月革命が、各民族の根本的な自立をさせるまで、ロシアの中のこれ等の少数民族はどんなに暮していただろうか? 遠い例はいらない。トルストイのコサックや傑出した短篇「ハジ・ムラート」を読むだけでいい、帝政時代の権力は、自分たちをこやすた・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・ 社会主義の社会で民族は真の意味で自立し、新しい生産と文化とが結びつきながら高揚し、調和しあうものとして動きはじめている。ハリコフ市はそういう点から一つの新しい民族首都である。ここを選んで国際的な革命作家の会議が行われたことは輝かしい。・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
出典:青空文庫