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・・・ 警官は電車を待たさないために車掌の姓名を自署さしてすぐに帰した。それから私に「貴方御いそぎですか」と聞いた。私はこの警官に対して何となくいい感じを懐くと同時に自分の軽率な行為を恥じる心がかなり強く起った。 ここで自白しなければなら・・・
寺田寅彦
「雑記(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
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・・・などと自署された他の人々の寄書がある。ホテルの木立の間に父の筆で、雲を破って輝き出した満月の絵が描加えられてある。父は当時いつも「無声」という号をつかい、隷書のような書体でサインして居る。 書簡註。父は当時三十七歳。旧・・・
宮本百合子
「中條精一郎の「家信抄」まえがきおよび註」