・・・さア、早く、ケーニッヒさん、タクシーを大至急。と娘を押し出してコルベット卿がロンドンを出るのを止めさせにやる。こういう場面で、私たちのまわりの現実にありふれた年寄りは、マア、お前、店だってこんなに流行っているのに今更何も云々とか、もう年ごろ・・・ 宮本百合子 「雨の昼」
・・・――そういう方にたいしては、こちらでも、至急考慮いたしますが――……」 私たち二人の作家の訪問は、一回きりで、つぎに、保護観察所という、刑務所の出張所のような役所で、内務省の役人との懇談会があった。そのときも、作家の側からは、生活権のこ・・・ 宮本百合子 「ある回想から」
・・・ 腹まきはやはり家にあってまだお送りしてなかったので至急送り出しました。私はひどいセキで吸入をしたりキンカンの汁をのんで居ります。 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ 教員の生活保証 事変以来、小学教員の不足と、その不足を至急に補うことから生じる質の低下とは心ある者を考えさせていたが、偶小学校教員の万引横領事件が発覚したということである。 これは勿論最も不幸な例外であろ・・・ 宮本百合子 「女性週評」
・・・ そして女中に留守中の小使銭をわたし、来た手紙の至急なのはあっちへ送る様にそうでないのはこれに入れて置いてお呉れとわざわざ小箱を出してやったりした。衣裳戸棚やその他のいらないものへ鍵をかけてそれを帯上げの前の方へ巻きつけながら、「出・・・ 宮本百合子 「蛋白石」
・・・何かなければよい、と思って居るうちに、翌日、林町から電話郵便が来た。至急、私に来い、と云うのである。 不快な、来るべきものが来たと云うような心持で、夜、自分は林町へ行った。 父が、話があるからと云って、西洋間に呼ばれる。「もう、・・・ 宮本百合子 「二つの家を繋ぐ回想」
出典:青空文庫