・・・よこずわりの娘たちは某作家から、あなたがたは第一線の花形です、とたたえられている。せめて毒のない花になってほしい、とはげまされている。それに答える娘たちの物語は、片仮名を二つかさねた名でよばれるこれらの娘たちの生活が、どんな現実をもっている・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・とどんな実際関係にいるかという、花形一つの身にあつまっている矛盾、分裂の諸関係を彼のためにも、読者のためにも客観的に整理して示さなければならないのではなかろうか。 だが、「誰のアミが現代のアクタモクタをホントにしゃくいあげることができる・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・アメリカの物質的方面を恐ろしい程体現して、自分はいくらでも、素晴らしい着物を着て出来る丈美くしく交際社会の花形となって居ればよいのだ。良人は自分のある御かげで、彼が如何に物質的豊富であり、女性を遇する方法を知って居るかを人に誇ることが出来る・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・たちの下に、なったばかりの花形、或はなろうとしている花形が多勢いる。彼女、彼が機会あるごとに過去のバレーやオペラの形式を利用して「自分」を、見物に印象づけようとする熱心さがつよい。「蹴球選手」において、「ゴトブ」の連中の爪先で踊る技術か・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・哲学ずきさえも、もし美しく化粧することを忘れない程度ならサロンの風変りな花形として黙認した。つまり、あらゆる婦人のための学問教養が「客間用」として授けられた訳なのだ。これは、プーシュキンの初期の作品にもよく描かれている。 ところが、皮肉・・・ 宮本百合子 「プロレタリア婦人作家と文化活動の問題」
・・・時の花形になったとき、英雄に仕立てあげたときだけ、さわぐ。 八月七日の時事新聞に「渡米選手晴れの壮行会」の写真が出ていた。ひとめ見て、何となしはっとした。村山主将が立ってマイクの前であいさつしている。左側に古橋、橋爪その他の選手たちが並・・・ 宮本百合子 「ボン・ボヤージ!」
・・・当時、帝政ロシアの文壇にはトルストイ、ツルゲネフ、アンドレーエフ、チェホフなどという世界の文学の花形が居ました。しかし、ゴーリキイの出現はロシアの文学にとってのみならず、当時の世界文学にとって一つの新しいおどろきとよろこびでした。何故なら、・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイについて」
出典:青空文庫