・・・あんなひょろひょろした若造にくらべては何と云ってもおみちにはおれのほうが勝ち目がある。(おみち、ちょっとこさ来嘉吉が云った。 おみちはだまって来て首を垂れて座った。(うなまるで冗談づごと判らなぃで面白ぐなぃもな。盆の十六日ぁ遊ば・・・ 宮沢賢治 「十六日」
・・・「薄暗い隅っこで若僧といちゃついてる!」 ルイジョフは、居合わせる多勢の労働者に向って叫んだ。「見たんだ! 俺は自分で見たんだ! これが、正しいっていうのか? え?」 インガは、予期しない光景に驚いている皆の前で自制を失わず・・・ 宮本百合子 「「インガ」」
・・・やっと十九か二十ぐらいの、修業ざかりと思われる若僧が、衣の袖を翻して心得顔に、「結構なものですな。まるでギリシア彫刻を見るようです、大理石の味がある」などと云う時、ははんと寥しいのは、私の性根がひねくれているのだろうか? 奈良の僧侶・・・ 宮本百合子 「宝に食われる」
・・・品の好くて見栄えのしない法衣をまとった二人の若僧と、枯れた様な僧が一人寝台のすぐそばに居る。二人の若僧は、大変に奇麗な顔をして居る。幕が上ると、一つ長腰掛に三人一っかたまりになって居る。やがて第一の若僧が立って自分の肩のあたりを・・・ 宮本百合子 「胚胎(二幕四場)」
・・・その人々の云うところは、もとのプロレタリア文学運動などは親がかりの若僧が観念的に大衆化を叫んでいたのであって、考えて見ればそれらの人間が大衆を云々するなどとは烏滸がましい、という風な論である。 日本のプロレタリア文学運動が、当時の歴史性・・・ 宮本百合子 「文学の大衆化論について」
出典:青空文庫