・・・そうして蛇口の処を見るというと、素人細工に違いないが、まあ上手に出来ている。それから一番太い手元の処を見るとちょいと細工がある。細工といったって何でもないが、ちょっとした穴を明けて、その中に何か入れでもしたのかまた塞いである。尻手縄が付いて・・・ 幸田露伴 「幻談」
・・・ 自分は自分のシカケを取出して、穂竿の蛇口に着け、釣竿を順に続いで釣るべく準備した。シカケとは竿以外の綸その他の一具を称する釣客の語である。その間にチョイチョイ少年の方を見た。十二、三歳かと思われたが、顔がヒネてマセて見えるのでそう思う・・・ 幸田露伴 「蘆声」
・・・瓦斯が自由に使え、いつでも蛇口を廻せば熱湯が出る台処は、働くに着物を汚す場所でもなければ、心持の悪い処でもありません。一時間も準備にかかれば気持よい夕餐が出来ます。 それを、談笑のうちにしまい、後の洗物や何かは良人も手伝って、七時半頃ま・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
出典:青空文庫