・・・それと同時に文部省でも特に中等教育における理化学教授に重きをおかれるようになって、単に教科書の講義を授くるのみならず、生徒自身に各種の実験を行わせる事になり、このために若干の補助費を支出する事になった。これは非常によい企てである。どうかこの・・・ 寺田寅彦 「物理学実験の教授について」
・・・搾取機関と補助機関があるんだ。お前たちは、ありとあらゆるものを、自分の手先に使い、それを利用することができる。たとえばだ、ほんとうは俺たちと兄弟なんだが、それに、ほんの「ポッチリ」目腐金をくれてやって、お前の方の「目明し」に使うことができる・・・ 葉山嘉樹 「牢獄の半日」
・・・ 婦人の性の本来は生殖に重点をおかれているのであるから、社会労働は、常に男の補助の範囲であるのが自然であり、従って賃銀も、いわゆる世帯主としての負担のにない手である男よりやすいのが当然であるとする論者がある。こういう立場の論者は、男も女・・・ 宮本百合子 「新しい婦人の職場と任務」
・・・二人が補助金だけで暮して、お前さんはあけても暮れても本にばっかりかじりついている。私はミシンで働いて、お前さんに暖いもの喰べさせていた時分、私たちは、じゃ、どんな言葉で喋ったっていうんだろう? ミーチカ!」 グラフィーラは知っている。ソ・・・ 宮本百合子 「「インガ」」
・・・ 第一列の前へさらに補助席だ。たちまち、舞台横の開いた扉の辺に幾重にもかたまっていた若い男女がそれに向って雪崩れ、素早く腰をおちつけた者が三四人ある。 四十を越した薄色の髪の監督はあわてて手をふりながら遮った。 ――タワーリシチ・・・ 宮本百合子 「三月八日は女の日だ」
・・・良人の僅かな月給を、どうしたら一銭少く使おうかと心配するより、先ず、自分が幾何補助する事が出来るかを考えます。 どうしたら怒らせまいかと思い患う前に先ずその一つ先の笑わせる事を考えます。 彼等が生活というものを真剣に考える事は、我国・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・ところが、統制になって、そういう補助の手段が減って来たために、専門家は愈々純粋の染色技術で行かなければならなくなって、ここで本当に腕のある熱心なひとは、必ず一つの進歩をとげることが期待されているのだという話であった。しかし、そこに又むずかし・・・ 宮本百合子 「生活のなかにある美について」
・・・「道具という単語をしらべたるところ、仏道修業の用具、人の手足に纏い、又は手にて使用する補助具、他のために利用せらるゝ人。もしくは陰茎、とあり。遺憾ながら予の顔面に該当品を発見せず」 あきらかに、いまの日本に横行している、笑わされたあとで・・・ 宮本百合子 「戦争はわたしたちからすべてを奪う」
・・・ 若しその男がずるくて女が補助費を貰えない場合は、裁判をして男の親があれば、その親の家から子供哺育費を取ることが出来る。 併し土地には手を触れることは出来ない。何故なれば、土地というものは農業生産の基礎である、一農戸に属するものだか・・・ 宮本百合子 「ソヴェトに於ける「恋愛の自由」に就て」
・・・――余談だが、ソヴェトでは、全露作家団体連盟に対しても、作家の技術と生活改善のために人民文化委員会芸術部が巨額な補助予算をもっているよ。画家だって、社会組織が違うから昨今の日本みたいに大小ブルジョアが小遣緊縮しはじめたおかげで閉口するような・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
出典:青空文庫