・・・時によると僕も日記中に君の見取り図くらいなところを書きとめたこともあるが、それは真の粗雑としたものだ。』『そのスケッチが見とうございますね、』と小山の求めるままに十一月三日の記から読みだした。『野を散歩す日暖かにして小春の季節なり。・・・ 国木田独歩 「小春」
・・・そこは次郎と三郎とでくわしい見取り図まで取って来た家で、二人ともひどく気に入ったと言っていた。青山五丁目まで電車で、それから数町ばかり歩いて行ったところを左へ折れ曲がったような位置にあった。部屋の数が九つもあって、七十五円なら貸す。それでも・・・ 島崎藤村 「嵐」
・・・書物の記載も、見取り図も至極簡単であるからやむを得ない。 そういう場合における品種鑑別の正確度に関する疑いをいっそう強められるようになったのは、非常によく似ていて、しかも少しずつちがうというような草の種類が非常に多いという事実に気がつい・・・ 寺田寅彦 「沓掛より」
出典:青空文庫