・・・ 日本プロレタリア作家同盟は、婦人作家をこめて正しい線に立つ全プロレタリア作家がその文学活動においてこれまでは大衆の半数者としての婦人の闘争の注意深い取扱いをやや見落していたことを厳しく自己批判した。この立ちおくれを急速にとりかえし、プ・・・ 宮本百合子 「国際無産婦人デーに際して」
・・・を読む場合、以上の点は見落としてならぬところである。『読売新聞』で、杉山平助氏が「党生活者」第六部を批評していたが、それは、この作品が五月号の部分では最も明瞭に且つ重点をそこにおいて企業内の反動政策との闘争について書いているのに肝心のそ・・・ 宮本百合子 「小説の読みどころ」
・・・そのことを伊藤氏も全く見落していられた。「幽鬼の町」を読んで、当時の文章を思いおこしたのには、連関があるのである。 現実がもし単に機械的に、潔癖でわり切れてゆくものならば、文学を通して訴えんとする人間的苦悩は生れないのである。昏迷や作品・・・ 宮本百合子 「数言の補足」
・・・ また、菊池寛のかつぎ出したものに対して、白鳥が、保護を拒絶した態度は興味があるけれども博覧な彼もついに見落していることがある。それは、この地球上には世界に比類ない大きい規模で諸芸術を花咲かせ、作家の経済的安定の問題から、住居・健康のこ・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」
・・・元帥ほどの人物が、そこを見落していなかったことは、彼の日常生活の簡素な心がけや、歴史の上に箇人的武勇を誇示することを嫌ったというところにあらわれていると見ることが出来る。 ところが、元帥をかこむ社会関係においてその心持は、常に十分活かし・・・ 宮本百合子 「花のたより」
・・・ ところが、ここに見落してはならぬことは、そのバルザックが自身の悲喜をも含めて運行するあらゆる社会生活の現象の奥に金の力を看破したと同時に、その威力に屈伏し、広汎な現実生活の社会性、歴史的発展の要因をその関係においては飽くまで受動的に固・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・女その他を書いていると見られるのですが、面白いことには菊池さんは、芸術的把握の中でそのようにいっている菊池さんを、菊池さんの現実的な生活のさまざまの内容と思い合わせてニヤニヤと笑っている女のあることを見落しておられるし、また若い女の中にそう・・・ 宮本百合子 「不満と希望」
・・・ それとともにもう一つ見落としてはならぬ変化は、社会組織の基礎として民衆の共同や協力を力説する思想が著しく栄えて来たことである。服従の代わりに協力。命令の代わりに協議。従ってまた個人は、社会に安全に生息するために、ある型に自分をはめ込ま・・・ 和辻哲郎 「世界の変革と芸術」
出典:青空文庫