・・・ ~~~~~~~~~~~~~~~~~ 以上は現在私が抱いている詩についての見解と要求とをおおまかにいったのであるが、同じ立場から私は近時の創作評論のほとんどすべてについていろいろいってみたいことがある。・・・ 石川啄木 「弓町より」
・・・勧善懲悪の旧旗幟を撞砕した坪内氏の大斧は小説其物の内容に対する世人の見解を多少新たにしたが、文人其者を見る眼を少しも変える事が出来なかった。夫故、国会開設が約束せられて政治休息期に入っていた当時、文学に対する世間の興味は俄に沸湧して、矢野と・・・ 内田魯庵 「二十五年間の文人の社会的地位の進歩」
・・・時勢が積極的となり、事実また、ほんとうに、社会のためにも働いているような人々が、五十以上の人にも多いのを知ると、昔の人の言った、この厭世的な見解は誤っていたということを知るのであります。そして、自分も、これからだと思い、また、真剣に、しなけ・・・ 小川未明 「机前に空しく過ぐ」
・・・ 個人は、集団に属するのが本当だというようなことから、なんでも、集団的に、階級的に見ようとするのは、この人生は、常に、唯物的に闘争しつゝあるという見解のもとに、疑いを抱かない、肯定的な議論であります。社会科学としては、それも重きをなす学・・・ 小川未明 「作家としての問題」
・・・ 芸術に対しては、いろいろの見解が下されることゝ思っています。中には、私と同じような考えから芸術にたずさわっている人もあることゝ信じています。 その人達は、文壇に於ける芸術というよりか、直に、自己の真情を社会に向って呼びかけるための・・・ 小川未明 「自分を鞭打つ感激より」
・・・リップスによれば、モラールは時と処と人とによって異なる道徳的見解、要求の類であり、如何なる民族も、階級も、個人もそれぞれこれを持っている。かかるモラールには真に道にかなう因子が含まれているに相違ないが、人間が人間である限り、道にかなわぬもの・・・ 倉田百三 「学生と教養」
・・・その結果、明治以降の大学の俗学たちの日本芸術の血統上の意見の悉皆を否定すべき見解にたどりつきつつあります。君はいつも筆の先を尖がらせてものかくでしょう。僕は君に初めて送る手紙のために筆の先をハサミで切りました。もちろんこのハサミは検閲官のハ・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・ 以前は何か一つよい映画が出ると、その映画の批評については自分の見解だけが正しくて他の人の批評は皆間違っているかのようにたいそうなけんまくで他の批評家の批評をけなしつけ、こきおろすというふうの人もあったものである。これは、たとえて言わば・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(4[#「4」はローマ数字、1-13-24])」
・・・科学者の研究の目的物は自然現象であってその中になんらかの未知の事実を発見し、未発の新見解を見いだそうとするのである。芸術家の使命は多様であろうが、その中には広い意味における天然の事象に対する見方とその表現の方法において、なんらかの新しいもの・・・ 寺田寅彦 「科学者と芸術家」
・・・科学の区別は別問題として、その人々の科学というものに対する見解やまたこれを修得する目的においても十人十色と云ってよいくらいに多種多様である。実際そのためにおのおの自己の立場から見た科学以外に科学はないと考えるために種々の誤解が生じる場合もあ・・・ 寺田寅彦 「科学上の骨董趣味と温故知新」
出典:青空文庫