・・・自己陶酔と独善にうるさい覚醒をもとめてやまない近代精神、理性へのよび声そのものが、この種類の作家たちには気にそまない軽蔑すべきことであるのだろう。 過去三年の間、戦争に協力したという事情から消極な生活にあった作家群が、一九四九年に入って・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・組織労働者の多いところより、全体として自覚ある労働者のすくない地方、政治的覚醒の著しいと見られていない地方を対象とした。 毎日新聞のこの方法は、何回かの調査のうちに或る均衡を見出そうとするある試みであったかもしれないが、文化賞のための具・・・ 宮本百合子 「しかし昔にはかえらない」
・・・人間性の恢復、人間として生きる諸権利の覚醒の声と動きに充満して、文学のすべての真面目な試みとすべての安易な云いのがれの、どれもが、日本文学における近代の社会性と人間性の確立の名のもとに行われた。 だが、きょう、わたしたちすべてが感じてい・・・ 宮本百合子 「「下じき」の問題」
・・・ 次第に覚醒している日本の民衆が肚の底からそのためにたたかっているより明るい確かな社会生活建設の願いと努力、その間には裏切られ、又もりかえす民衆の歴史の熱意は「横になった令嬢」と何のかかわりがあるだろう。中国の民衆を愚昧無気力にしておく・・・ 宮本百合子 「商売は道によってかしこし」
・・・明治の暁の光の中で半ば生れんとして生れなかった自由民権時代の婦人の社会的覚醒への希望の本質は、むしろこの流れのうちに発展され、うけつがれるべきであったが、日本の社会の歴史の全く独特な襞の深さは、常に歴史のテムポを極度に圧縮し、あらゆる事象の・・・ 宮本百合子 「女性の歴史の七十四年」
・・・なぜならば、社会主義的民主主義の社会は、現世紀における人類の最も覚醒した全目的の社会形態なのだから。二世紀昔のスウィフトの馬には及びもつかないゾシチェンコの猿にひきまわされて、自身の尽瘁と価値の上にゲラゲラ笑いのつばをとびちらしているとした・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・しかし、真面目な婦人であるならば、その満足の期間は短くて、新しい社会的な立場はとりもなおさず、より厳粛な社会的覚醒への扉であったことを知ると思う。 民法が改正されようとしている。婦人にとって重大なかかわりをもつ結婚、離婚、親権、財産権な・・・ 宮本百合子 「世界の寡婦」
・・・文学にたずさわる人々をこめた人民感情そのものの中に、自主たろうとするやみがたい熱望が覚醒していないために、これらの人々にとっては自主でなければならない、という民主主義のよび声は、自分のそとから、一種の強権の号令であるかのようにきこえるらしい・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・半ば眠り半ばは確乎と覚醒している厖大なアジアの一国、中国で、資本主義以前にありながら、しかも、目下の急速な世界情勢の動きにつれて、豊饒な民族資源が才能さえも含めていきなり最も民主的方法で開発される十分の可能をもっているという事実は、私たちに・・・ 宮本百合子 「春桃」
今度岡倉一雄氏の編輯で『岡倉天心全集』が出始めた。第一巻は英文で発表せられた『東洋の理想』及び『日本の覚醒』の訳文を載せている。第二巻は『東洋に対する鑑識の性質と価値』その他の諸篇、第三巻は『茶の書』を含むはずであるという。岡倉先生の・・・ 和辻哲郎 「岡倉先生の思い出」
出典:青空文庫