・・・長唄連中の顔ぶれでは、誰れが来るとか来ないとかいうことも問題になっていた。観劇料の高いことも評判であった。 道太は格別の興味も惹かなかったけれど、ある晩お絹と辰之助とで、ほとんど毎晩の癖になっている、夜ふけてからの涼みに出て、月光が蛇の・・・ 徳田秋声 「挿話」
・・・労働に疲れ種々の患難に包まれて意気銷沈した時には或は小さな歌謡を口吟む、談笑する音楽を聴く観劇や小遠足にも出ることが大へん効果あるように食事も又一の心身回復剤である。この快楽を菜食ならば著しく減ずると思う。殊に愉快に食べたものならば実際消化・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・をひいた。シュレジアの地主と工場主と軍隊が流した織匠の血は、すべての人々の胸のうちに正義の憤りをもえたたせた。後年、ハウプトマンが有名な「織匠」にこの悲劇を描いた。ハウプトマンの「織匠」を観劇して、おさえられない感銘からケーテ・コルヴィッツ・・・ 宮本百合子 「カール・マルクスとその夫人」
・・・一晩の観劇に対して、無抵抗に支払うものとしてだけ扱われて来たのである。 ここにも、これまでの日本の封建性と近代資本社会の混合した恐ろしい害悪が現われている。 こういう文化機構であったからこそ、戦争中の日本人民は、あのように侵略思想で・・・ 宮本百合子 「木の芽だち」
・・・・六カペイキコルシュ劇場 一ルーブル十一カペイキオペラ 一ルーブル二十四カペイキ メーデーの翌日、モスクワじゅうの劇場は全職業組合の無料観劇日だ。しかし「大体云ってソヴェトはま・・・ 宮本百合子 「三月八日は女の日だ」
・・・この一冊の帳面は全体が観劇日記みたいなものなんだね。 ――ソヴェトでは、歴史の進展が実に速いからね。もう四五年してごらん、芝居だって、きっと随分変るだろうと思うんだ。面白いだろう? ソヴェトを愛する一人の外国の素人が一九二八年から三〇年・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・ 娯楽設備一年二回観劇。改造さえよめぬ。労救に関係出来ぬ。横浜ドック 従業員二千人。ギマン政策として日給三円以上は二十銭、二円以上十銭、二円以下六銭のね上げをしたが、日給を時間制にしたので、仕事がないと一文にもならぬ。・・・ 宮本百合子 「大衆闘争についてのノート」
出典:青空文庫