・・・ 片田舎の中学生で、さきざき高等学校から大学に進もうという志望をいだいているものにとっては、暑中休暇に帰省している先輩の言動はかなり影響のあるものである。そういうような影響もあるいはあったろうが、暑中休暇の間はほとんど毎日のように私のう・・・ 寺田寅彦 「亮の追憶」
・・・「港に働く婦人たちは、社交上の因習のためにあらゆる言動を狭ばめられている上流の貴婦人たちよりも、その姿、その本質をより多く私に示してくれました。彼女たちは、その手を、その脚を、その髪を見せてくれます。着物をとおして肉体をみせてくれます。そし・・・ 宮本百合子 「ケーテ・コルヴィッツの画業」
・・・一人の将軍が戦争の時流に乗じたあまり、諸君は地球の引力を否定した武器を発明すべきである、と呼号したりした場合、その言動は人間的非合法なのである。封建の専制支配を堅めるために作られた日本の治安維持法は、制定されるとき、山本宣治の血を流したばか・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・同時に、対外的な場面も拡大されているのだがそういうところで日本の婦人が示す言動の、政治を意識する方法の低さから生じる非政治性というものは、やはり案外に大きい意味をもっているのではないかと思う。そういう点では、婦人参政権獲得のために苦難な道を・・・ 宮本百合子 「女性の歴史の七十四年」
日本の言葉に、大人気ない、という表現がある。誰の目から見てもあんまり愚劣だと思われることがらや、衆目が、そこに誹謗を見とおすような言動に対して、まともにそれをとりあげたり、理非を正したりすることは、日本の表現では大人気ない・・・ 宮本百合子 「世紀の「分別」」
・・・「自分の仲間を一人一人敵の陣営につき出そうとするような言動は、われわれは例えばどんな動機からでも避けなくてはならない」 他の一つは、どの批判にも繰返されているところの、作家同盟が同伴者作家をも含む広汎な大衆組織である、同伴者作家の階級的・・・ 宮本百合子 「前進のために」
・・・ 他人の話を聞き、他人に会い、その言動の裡から欠点ばかりを摘発するとしたら、結局自分は、今在るだけの自己を肯定するばかりで、何ら新らしい利益を得たことにならないのではありませんか。同様のことが、外国旅行者にも云えると思います。 その・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・いるのではなく、ソヴェト社会の建設、日本の帝国主義者のファシストとしての活動、日本の小市民家庭、インテリゲンチャの一部の混乱と崩壊、ポーランド、ドイツの労働者へのテロル、帝国主義日本の在外官僚の反ソ的言動、全体として若く建設されつつある新し・・・ 宮本百合子 「文学について」
・・・くりかえし改めて、日本のすべての誠実な人々は、戦争そのものはもとよりのこと、戦争挑発のすべての言動を絶対に好んでいないし、それを拒否していることを明瞭にする日として。 八月十五日は、まだ日本で平和の確保された日としてあらわれていない。平・・・ 宮本百合子 「わたしたちは平和を手離さない」
・・・ この事があってから私は、F君の異性に対する言動に、細かに注意した。そして君がこの方面に於いて全く無経験であることを知った。君は衣食の闕乏を憂えない。君は性慾を制している。君は尋常の徼幸者とは違う。君はとにかくえらいと、私は思った。そこ・・・ 森鴎外 「二人の友」
出典:青空文庫