・・・評論家協会は、言論報国会となった。文学報国会の大会では、軍人が挨拶をし、一九三一、二年代に、文学の純粋性といって、プロレタリア文学に極力抵抗した作家たちが、群をなして軍国主義御用の先頭に立ったのであった。 こういう文化上の悲劇、作家・・・ 宮本百合子 「ある回想から」
・・・そのなかには当然言論出版の官僚統制をもたらす用紙割当事務庁法案があり、ラジオ法案がある。国会の人さえ知らないうちに用意されたこれらの法案は、形式上国会の屋根をくぐっただけで、事実上は官僚の手でこねあげられ、出来上った法律として権力をもってわ・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・政府のいうことなんか信用できないと云いながら、その政府に扈従する言論や出版をそのまま権威とする素朴さがある。あの世論調査を心ある外国人が見たら、何と感じるだろう。おそらく、日本の不幸というものの底知れぬ深さにおどろきを禁じ得ないと思う。この・・・ 宮本百合子 「現代史の蝶つがい」
・・・と同時に、今日、言論の自由とか、男女平等とか申しておりますが、日本のどこででも、やっぱりまだ巨人がいったように、女が本当に求めているのは、独立だ、ということを理解しない人が沢山あるように見受けます。 最近の芝居で「人形の家」をやっており・・・ 宮本百合子 「幸福について」
・・・世界平和のために戦争挑発とたたかい、戦争に誘いそれを暗示する思想と言論のカナライゼーションに抗してわれわれ自身を恥辱から救おうとする決意と行動は、こんにち、フランスの抵抗をまねる範囲をぬけている。一九五〇年は、日本の理性が試練される年である・・・ 宮本百合子 「五月のことば」
・・・ この荒い波は、直接間接文学に影響を与えずにいなかった。言論機関としてのジャーナリズムがつよい統制、整備のもとにおかれたのは一九四八年からだったが、その方法は、昔からみると比べものにならず技術的であった。ゴロツキ新聞の排除、用紙配給の是・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・情報局が戦時中すべての戦争反対の言論を禁止したように。 二、日本の文化の民主化を口実として、あらゆる機会に文化の官僚統制をもくろんでいる政府は、用紙割当事務庁案を具体化しようとしている。用紙の不足とそれにからむ不正取引摘発を機会に、・・・ 宮本百合子 「今日の日本の文化問題」
・・・更に反対の方面を見ると、信仰もなくしてしまい、宗教の必要をも認めなくなってしまって、それを正直に告白している人のあることも、或る種類の人の言論に徴して知ることが出来る。倅はそう云う人は危険思想家だと云っているが、危険思想家を嗅ぎ出すことに骨・・・ 森鴎外 「かのように」
・・・ただ僕は言論の自由を大事な事だと思っていますから、発売禁止の余り手広く行われるのを歎かわしく思うだけです。勿論政略上已むことを得ない場合のあることは、僕だって認めています。」「ロシアのような国では盛んに遣っているというじゃないか」と、山・・・ 森鴎外 「食堂」
・・・Goethe が小さいながら一国の国務大臣をしていたり、ずっと下って Disraeli が内閣に立って、帝国主義の政治をしたようなのは例外で、多くは過激な言論をしたり、不検束な挙動をしたりする。George Sand と Eugユウジェエヌ・・・ 森鴎外 「沈黙の塔」
出典:青空文庫