・・・○そうして、ゆっくり腰をすえて、自分の力の許す範囲で、少しは大きなものにぶつかりたい。計画がないでもないが、どうも失敗しそうで、逡巡したくなる。アミエルの言ったように、腕だめしに剣を揮ってみるばかりで、一度もそれを実際に使わないようなこ・・・ 芥川竜之介 「校正後に」
・・・それから僕の計画していた長篇のことを考え出した。それは推古から明治に至る各時代の民を主人公にし、大体三十余りの短篇を時代順に連ねた長篇だった。僕は火の粉の舞い上るのを見ながら、ふと宮城の前にある或銅像を思い出した。この銅像は甲冑を着、忠義の・・・ 芥川竜之介 「歯車」
・・・いったい計略計略って花田の奴はなにをする気なんだろう。沢本 おい、ともちゃん……乗るんだ。君は俺たちのモデルじゃないか。若様も描けよ。瀬古 うん描こう。いったい計画計画って……おい生蕃、ガランスをくれ。沢本 その色こそは余・・・ 有島武郎 「ドモ又の死」
・・・具を揃えて元禄の昔に立返って耳の垢取り商売を初めようというと、同じ拗者仲間の高橋由一が負けぬ気になって何処からか志道軒の木陰を手に入れて来て辻談義を目論見、椿岳の浅草絵と鼎立して大に江戸気分を吐こうと計画した事があった。当時の印刷局長得能良・・・ 内田魯庵 「淡島椿岳」
・・・鴎外の賛成を得て話は着々進行しそうであったが、好書家ナンテものは蒐集には極めて熱心であっても、展覧会ナゾは気紛れに思立っても皆ブショウだからその計画も捗取らないでとうとう実現されなかった。(この咄については『明星』掲載当時或る知人から誤解で・・・ 内田魯庵 「鴎外博士の追憶」
・・・これ確かに富の源でありますが、しかし経済上収支相償うこと尠きがゆえに、かつてはこれを米国に売却せんとの計画もあったくらいであります。ゆえにデンマークの富源といいまして、別に本国以外にあるのでありません。人口一人に対し世界第一の富を彼らに供せ・・・ 内村鑑三 「デンマルク国の話」
・・・ 曾て、市街公園の名称にて、新聞に報ぜられたと記憶するが、なんでも、ある一定の時間内だけ、その区域間の自動車、自転車の通行を禁じて、全く、児童等のために解放して、小さき者達の遊園とする、計画であったと思う。あの話は、その後何うなったので・・・ 小川未明 「児童の解放擁護」
・・・たゞ俗人のみが、すべてに於て、計画的であるであろう。同じく、芸術は、作家が、自から生きることの炎だ。その人の生活を離れて、芸術を論ずることはできぬ。作品から受ける感激は、その作家の人格であろう。 世に、相許さざるものがある。強権と友・・・ 小川未明 「自由なる空想」
・・・それ故私は高等学校にはいってから伸ばそうという計画を樹て、学校もなるべく頭髪の型に関する自由を許してくれそうな学校を選んだ。倖い私のはいった学校は自由を校風としていた。授業のはじめと終りに鳴る鐘は自由の鐘とよばれていて、その学校のシンボルで・・・ 織田作之助 「髪」
・・・ しかし、これとても全然はなからの計画ではなく、冷酷といってしまえばそれまでだが、敢えて「あばく」に足るほどのことでもなかった。同じ「あばく」なら、書き洩らしたところに、もっと効果的な材料があった筈だ。 すなわち、成績のわるい支店の・・・ 織田作之助 「勧善懲悪」
出典:青空文庫