・・・もし人民が、現在日本政府は武力をもっていないという公の建前を無視して動けば、政府は、連合国勢力に誇大的訴えとして、人民に自治自制する能力なし、と実証し、反動に一歩前進しようと試みるであろう。人民の力の表現である真に民主的な政党は、治安維持法・・・ 宮本百合子 「人民戦線への一歩」
・・・これは日本の出版屋が、目ざとくて、すこしでも評判な作品なら、最も誇大にかついで翻訳を売りだしてきた慣例に照らしあわせてみて、なかなか興味ふかい現象であると思う。つまりゾシチェンコは、少くとも外国へ、これがソヴェト作家の代表であるとおし出すに・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・虚構誇大、事実をまげて検事裁判官、裁判所を誹謗し、演説会で宣伝する。これは侮辱、名誉毀損、恐喝、恐迫等の犯罪を構成する。適当な機会に断固たる処置をとりたい。数十名の弁護人ならびに三分の二の傍聴人により法廷を制圧している等の諸点をあげて示威し・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
・・・ 特徴のように外部から見られている諦観や金銭尊重の傾向も、それを誇大に固定して見れば、一つの偏見になる。これまでの中国の庶民生活の波瀾の歴史を眺めれば、そのよって来たるところも察せられなくはないのである。 日本評論の九月号に、中国の・・・ 宮本百合子 「中国文化をちゃんと理解したい」
・・・ 仕事ぶりも、恋愛も負債も、すべてに所謂度はずれなバルザックの生活ぶりに圧倒されて、同時代は勿論後世にも或る種の人は、バルザックを一種の人の好い俗悪な誇大妄想者であったというところで、自身納得しようとしたらしい。反感を含んだ批評家は、バ・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・ヨーロッパを救うという義務は、アメリカが全人民生活の安定を保ちながら、どこまで負担し、実現し得ることか、救世主めいた誇大な表現をさけよ、という声がきこえている。しかし、その半面では西ヨーロッパと東ヨーロッパの対立を挑発し、また秘密計画Xと金・・・ 宮本百合子 「便乗の図絵」
・・・その内心の鼓動を、Aの傷かない程度に表現しようと無意識にもする為、時には、些か迷惑であったことを誇大したり、ハアティーに笑って過した数時間を、詰らなそうに話してきかせたりすることが起ったのである。 此、相手の嫉妬心に制せられた状態が、自・・・ 宮本百合子 「二つの家を繋ぐ回想」
・・・ひろくて深い柔かい蠢いている周囲の文化的な暗さの中に、一点明るい灯として作者もその中にいる狭い生活環境があって、まわりの暗さは一層その明るさの環内での人々の輪廓を鮮明にきわ立たせ、その動きをやや誇大した重要さで感覚させ、その意味では強烈にく・・・ 宮本百合子 「文学と地方性」
・・・そう言ったことが局部的に誇大してつたえられたのでしょう。このことからわたしが紫式部をもって自任して満足していると断定して批難するということはどれほど愚劣であるかあきらかであると思います。 日本の歴代の権力は、天皇制の擁護のため愚民政策・・・ 宮本百合子 「文学について」
・・・恋愛や結婚が人間の人格完成のためにある、といえばそれは一面の誇大であるが、真の愛の情熱は驚くばかりに具体的なものである。必要を鋭くかぎわける。理論的には進歩的に見える男が家庭では封建的な良人であるというようなことも、良人と妻という住み古した・・・ 宮本百合子 「若き世代への恋愛論」
出典:青空文庫