・・・ 女は聞かなかった様子で語り続けた。「わたくしは内へ帰りますの。あちらでは花の咲いている中で、悲しい心持がしてなりませんでした。それに一人でいますのですから。」「あなたはまだ極くお若いのでしょう。ねえ、お嬢さん。」この詞を、フィンク・・・ 著:リルケライネル・マリア 訳:森鴎外 「白」
・・・静かな、聞こえるか聞こえないほどの声で、たましいの言葉を直接に語り出させようとするような、あのメエテルリンクの芝居が、耳を聾するようなワグナアの音楽にも劣らず人心を動かしたのは何ゆえであるか。それを知るものはただ調子の弱さをもってこの画を責・・・ 和辻哲郎 「院展日本画所感」
出典:青空文庫