・・・と、まあ、こんな考からして外国語学校の露語科に入学することとなった。 で、文学物を見るようになったのは、語学校へ入って、右のような一種の帝国主義に浮かされて、語学を研究しているうちに自らその必要が起って来たので。というのは、当時の語学校・・・ 二葉亭四迷 「予が半生の懺悔」
・・・豚は語学も余程進んでいたのだし、又実際豚の舌は柔らかで素質も充分あったのでごく流暢な人間語で、しずかに校長に挨拶した。「校長さん、いいお天気でございます。」 校長はその黄色な証書をだまって小わきにはさんだまま、ポケットに手を入れて、・・・ 宮沢賢治 「フランドン農学校の豚」
・・・ 斯うして、考えるので、私の先は非常に多忙な訳になる。 此頃は、幸健康も確らしくなって来て居るから又とない心丈夫な事である。 語学の必要をつくづく感じて居る。 しなければならない事に追われる様で、頭が散漫になりはしまいかと怖・・・ 宮本百合子 「偶感」
・・・ この間の世界地図は、ひどいのでしたが、無きには増しと存じ、いまにもっとましなのを買ったらとりかえましょう。語学の本はもうつかっていらっしゃいますか? 坪内先生が死なれて、私はあちらこちらから感想をもとめられましたが、先生と私との間・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ 三省堂で語学の本など買ったのですが、どうかしら。すこしそれでやって御覧になってもし工合がわるいようでしたら、どうぞすぐおっしゃって下さい。別なのをさがします。どこもかしこも歳暮売出しの飾りで賑やかです。色彩は、はでであるが、何か通行人・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・友達のところへ語学の教師が来る。その間、私はいつも街を歩いて来るのである。 トゥウェルフスカヤの広い通りをプラウダ社のある方へ人波に混ってゆるやかな坂を登っているうちに、私は一つの明瞭な苦痛の感じにとらえられ、自分の歩いていることが分ら・・・ 宮本百合子 「坂」
・・・ そのフランスにいたとき、語学の教師がこういうことを話した。『フランスの子供ほど、世界中でマセた子供はいない。九つになれば何でも知っている。だから迚も共学なんぞさせられないのだ。ある知人の家へよその細君がやって来た。そして、「宅がルアン・・・ 宮本百合子 「砂遊場からの同志」
・・・その時代の女性教育の目やすは溌剌とした希望をたたえてひろく高く、たとえば語学の勉強にしろ他の勉強にしろ解放されている部分では、男と女との程度の差をつけずに勉強した時代であった。人間として男と女とはひとしいものであり、ひとしくあるべきものとい・・・ 宮本百合子 「婦人の読書」
・・・「石橋真国は語学に関する著述未刊のもの数百巻を遺した。今松井簡治さんの蔵儲に帰している。所謂やわらかものには『隠里の記』というのがある。これは岡場所の沿革を考証したものである。真国は唐様の手を見事に書いた。職業は奉行所の腰掛茶屋の主人であっ・・・ 森鴎外 「細木香以」
・・・私は安国寺さんが語学のために甚だしく苦しんで、その病を惹き起したのではないかと疑った。どんな複雑な論理をも容易く辿って行く人が、却って器械的に諳んじなくてはならぬ語格の規則に悩まされたのは、想像しても気の毒だと、私はつくづく思った。 満・・・ 森鴎外 「二人の友」
出典:青空文庫