・・・しかも、こちらは、愚劣な雑音の氾濫を頭から浴びせられているばかりで、それを調整するために自分の手を出すことはもちろん、やかましいスウイッチを切る自由さえも与えられていない。それは役所の日課の時間割によって、忠実になされているのであるから。私・・・ 宮本百合子 「芸術が必要とする科学」
・・・たとえば十一月一日に各新聞紙が刷りこんだ読者調整カードというものがあった。あのカードへ、これからよみたい新聞の名をかいて、新聞読者調整事務所といういかめしいところへ送ってやれば、欲しい新聞がよめるというしかけになっていた。これまでよみたい新・・・ 宮本百合子 「現代史の蝶つがい」
・・・ 一九二一年の果敢な新経済政策は、この生産関係の調整のために敢行された。新経済政策は、農民には場合によって八時間以上の労働と、土地の貸借、他人の労力の雇傭、生産品の自由売買其他を許した。反動的な農民は、当時ソレ見ろとばかり心で手を打った・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・農民組合は日本全国にわたって供出の合理化と公正な農地調整法の実現のために闘っており、日本でははじめて全国的な農民組合婦人部の大会が近々にもたれようとしています。 つい一年ばかり前はあのような屈従を強いられていた日本の全女性が、各方面でこ・・・ 宮本百合子 「国際民婦連へのメッセージ」
・・・アランに云わせると、散文は自己自身と他からの働きかけとの間の調整を求めるのを法則としていて、従って外的ないろいろな力に追いまわされもするものであるが、歌・詩は、自己の均衡の上に築かれていて自身の諸部分のあいだに諧和を求めるもの、従って歌は人・・・ 宮本百合子 「作品のよろこび」
・・・砂糖を食品として科学的に理解するとともに、その砂糖が今日の社会で、どういうありかたをして来ているか、ということについて発見し、それをほんとに民族生活の幸福のために、合理的に調整してゆく実力も、明日の女性の人間叡智の内容となって行かなければな・・・ 宮本百合子 「砂糖・健忘症」
十一月一日の各新聞のすみに、読者調整のカードがすりこまれていた。 そのカードには、現在どんな新聞をよんでいるか、これからどんな新聞が読みたいかを書きこむ欄があって、希望新聞の名を書けばその新聞へ切りかわることができるし・・・ 宮本百合子 「主婦と新聞」
・・・これも、やっぱり人民文化委員会が調整して、やって行く。 ――いやに窮屈みたいじゃないか。計画。計画。それに、誰だったかやっぱりソヴェトへ行って来た人が云っていたよ、ソヴェトの映画でも芝居でも、宣伝ばっかりで面白くもなんともない。一つ二つ・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・正しく調整された民族自主の国々が自由にゆき来し、いろいろな作家が、いろいろの鏡、いろいろの角度で、内と外からそれぞれの国の生活を互に映し、互に表現し合い芸術化してゆく愉しさこそは、この地球に生れ合わしたそれぞれの時代の人間の真の歓喜と富貴で・・・ 宮本百合子 「春桃」
・・・それらの機械の精巧さ、小学校を出たばかりの女の子でも使えるまで高度に調整され、単純化された分業の過程というものは、少くとも日本の文明のある水準を語るものでなければならないと思う。そのことに疑点を挾むものはおそらく一人もないであろう。 と・・・ 宮本百合子 「婦人の文化的な創造力」
出典:青空文庫