・・・にまでも論及したのであればなおさらおもしろく有益であろう。 六階で以前のままなものは花卉盆栽を並べた温室である。自分は三越へ来てこの室を見舞わぬ事はめったにない。いつでも何かしら美しい花が見られる。宅の庭には何もなくなった霜枯れ時分にこ・・・ 寺田寅彦 「丸善と三越」
・・・ 次に地震の問題に移って、地殻内部構造に論及するのは今も同じである。ただ彼は地下に空洞の存在を仮定し、その空洞を満たすに「風」をもってしたのは困るようであるが、この「風」を熔岩と翻訳すれば現在の考えに近くなる。彼はまた地下に「川」や「水・・・ 寺田寅彦 「ルクレチウスと科学」
・・・分化作用を述べる際につい口が滑って文学者ことに小説家の眼識に論及してしまったのであります。だからこれをもって彼らの使命の全般をつくしたとは申されない。前にも云う通りついでだから分化作用に即して彼らの使命の一端を挙げたのに過ぎんのである。した・・・ 夏目漱石 「文芸の哲学的基礎」
・・・然るに此女大学の全編、曾て一語も女子智育の要に論及したることなきは遺憾と言う可し。扨又本章中、人を誹り偽を言う可らず、人の謗を伝え語る可らず云々は、固より当然のことにして、特に婦人に限らず男子に向ても警しむ可き所のものなれば、評論を略す。・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・左れば女大学評論及び新女大学の二篇は、先生先天の思想に発して腹稿は既に幾十年前に成りたるに拘わらず、之を公にするの機会を得ざりしものが、時勢の進歩とや言わん、人心の変化とや言わん、一方に新民法の発布は先生をして恰も有力なる味方を得たるの思い・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
・・・ そもそも本書全面の立言は、人生戸外の公徳を主として、家内私徳の事には深く論及するところを見ず。然るに鄙見はまったくこれに反し、人間の徳行を公私の二様に区別して、戸外公徳の本源を家内の私徳に求め、またその私徳の発生は夫婦の倫理に原因する・・・ 福沢諭吉 「読倫理教科書」
・・・斯る醜行を犯す者は、一家の不幸を醸して、禍を後世子孫に遺すのみならず、内行不取締は醜聞を世界万国に放つものにして、自国の名声を害するの罪人なり云々とて、筆鋒の向かう所は専ら男子にして、婦人の地位如何に論及したることなし。そもそも我が国の婦人・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
出典:青空文庫