・・・――八大竜王鳴渡りて、稲妻ひらめきしに、諸人目を驚かし、三日の洪水を流し、国土安穏なりければ、さてこそ静の舞に示現ありけるとて、日本一と宣旨を給りけると、承り候。―― 時に唄を留めて黙った。「太夫様。」 余り尋常な、・・・ 泉鏡花 「伯爵の釵」
・・・「諸人に好かれる法、嫌われぬ法も一所ですな、愛嬌のお守という条目。無銭で米の買える法、火なくして暖まる法、飲まずに酔う法、歩行かずに道中する法、天に昇る法、色を白くする法、婦の惚れる法。」 四「お痛え、痛え、・・・ 泉鏡花 「露肆」
・・・因を補ひ得たり 犬川荘助忠胆義肝匹儔稀なり 誰か知らん奴隷それ名流なるを 蕩郎枉げて贈る同心の結 嬌客俄に怨首讎となる 刀下冤を呑んで空しく死を待つ 獄中の計愁を消すべき無し 法場若し諸人の救ひを欠かば 争でか威名八州を振ふ・・・ 内田魯庵 「八犬伝談余」
・・・神田本同書には、「此志一上人はもとより邪天道法成就の人なる上、近頃鎌倉にて諸人奇特の思をなし、帰依浅からざる上、畠山入道諸事深く信仰頼入りて、関東にても不思議ども現じける人なり」とある。清氏はこの志一を頼んで、だぎにてんに足利義詮を祈殺そう・・・ 幸田露伴 「魔法修行者」
・・・批評の条項についても諸人の合意でこれらの高下を定める事ができるかも知れぬ。崇高感を第一位に置くもよい。純美感を第一にするもよい。あるいは人間の機微に触れた内部の消息を伝えた作品を第一位に据えてもいい。あるいは平々淡々のうちに人を引き着ける垢・・・ 夏目漱石 「作物の批評」
・・・ 香以の交遊諸人に関しても、わたくしは二三の報を得た。尾道の古怪庵加藤氏は云う。「香以伝に香以の友晋永機を出し、その没年を明治三十七年としたのは誤であろう。今の機一君の父も永機、祖父も永機であった。香以の友は祖父の方であろう。そして明治・・・ 森鴎外 「細木香以」
出典:青空文庫