・・・ 唖々子はかつて硯友社諸家の文章の疵累を指したように、当世人の好んで使用する流行語について、例えば発展、共鳴、節約、裏切る、宣伝というが如き、その出所の多くは西洋語の翻訳に基くものにして、吾人の耳に甚快らぬ響を伝うるものを列挙しはじめた・・・ 永井荷風 「十日の菊」
・・・この際や読書訳文の法、ようやく開け、諸家翻訳の書、陸続、世に出ずるといえども、おおむね和蘭の医籍に止まりて、かたわらその窮理、天文、地理、化学等の数科に及ぶのみ。ゆえに当時、この学を称して蘭学といえり。 けだしこの時といえども、通商の国・・・ 福沢諭吉 「慶応義塾の記」
・・・ 註 本文に引例した諸家の作品を、直接に見ようと思われる読者のために、それ等が何に収められているかを、記して置く。「興津彌五右衛門の遺書」・「阿部一族」・「佐橋甚五郎」、「高瀬舟」「寒山拾得」・「じいさんばあさん」、「椙原品・・・ 宮本百合子 「鴎外・芥川・菊池の歴史小説」
・・・ 去年の暮、文学の分野に関しては、ともかく或る概括が諸家によってされていた。その前年からルポルタージュとか生産文学とか農民文学とか激しく動揺していた現代文学の雰囲気も、十四年に入ってからはそれぞれの歩みのなかでおのずから一応の落付きを示・・・ 宮本百合子 「今日の文学の諸相」
・・・ さっき触れた朝日新聞の諸家の見解の中で山脇高女の先生である竹田菊子氏が、男装のレビューガール等を慕うのは「この頃は昔と違って結婚年齢がおくれているから、結婚まで一つの遊戯をしようと考えているのではなかろうか」と述べていられるのは、・・・ 宮本百合子 「昨今の話題を」
・・・を筆頭として諸家の随筆が売り出されたが、これは寧ろ当時の文学の衰弱的徴候として後代は着目する性質のものなのである。 三 以上のような諸現象が、一部の作家の間に文学の危期としての警戒を呼び醒したのは極めて当然・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・ その一つの原因は、婦人作家の擡頭ということにつれて、諸家の見解がのべられているのに、何となく十分現実を掘り下げていない感銘を受けたからでもある。 婦人作家がこの一年に比較的数多い作品を発表もしたのは一般に高まった文学性への要求と婦・・・ 宮本百合子 「地の塩文学の塩」
・・・とだけかかれていて、問題がおこってからジャーナリズムの上に諸家がかかれているような、文学史的意義の評価、ヒューマニティーの問題としてローレンスがとらえた性のモメントは、二〇年前のヨーロッパの中流的偽善に何を投げたかという社会的意義などについ・・・ 宮本百合子 「「チャタレー夫人の恋人」の起訴につよく抗議する」
・・・ ところで、転向作家についての諸家の意見は、ある特殊な動機をもつもの以外に、大たい雅量と常識とをもって対する態度であるが、どの文章の中にも二つの共通した点が、強調されてあった。それは、これまでいわゆる転向に関しての作品を発表した幾人かの・・・ 宮本百合子 「冬を越す蕾」
・・・ 先頃、私は、或る同人雑誌が、作家と生活の問題について諸家の意見を求めているのを読んだことがあった。 作家が生活難をどう考え、どう解決してゆくかという問いであったと思う。それに答えている松田解子氏の言葉が心にのこった。松田さんは、作・・・ 宮本百合子 「見落されている急所」
出典:青空文庫