・・・この事件で検事局が警視庁の捜査本部へ殺人の方向で進めてくれと特に注文をつけ、捜査本部はかならずしも同調しなかったことは世人の記憶にあたらしい事実である。『読売新聞』は一貫して犯罪性を強調し、この裏に共産党ありと、あすにも犯人があがりそう・・・ 宮本百合子 「犯人」
・・・安倍源基は、警視庁の特高部長でした。それから人民抑圧の手柄によって、警視総監となり、内務大臣となり、さいごに企画院にゆきました。彼の出世の一段階ごとに治安維持法の血がこくしたたっています。小林多喜二を拷問で殺したのも、安倍源基とその部下の仕・・・ 宮本百合子 「ファシズムは生きている」
・・・安倍源基という人ははじめ警視庁の特高課長であり、その次は警視総監になり、次は内務大臣になって、それから企画院に入った人です。その間に日本の私達人民の自由と文化とは、どういう目にあったでしょう。小林多喜二を殺したのは安倍源基とその配下です。岩・・・ 宮本百合子 「平和運動と文学者」
・・・私がよそから何心なく家へ帰って来たら、警視庁特高の山口がはり込んでいて、任意出頭の形式で所轄署へ来いということです。所轄署駒込署へ行くと、中川というこれも文化団体弾圧専門の特高が待ちかまえていて、日本プロレタリア文化連盟のことで私を調べなけ・・・ 宮本百合子 「ますます確りやりましょう」
・・・そういう思想を時代の圧力として、いずれかといえばリベラルな立場を持っていた父親公荘を、通俗に中途であっさり病死させている作者の手法のかげに、この作の中途で警視庁に呼びつけられたりした作者の語られない苦衷があるのかもしれない。私たちは読者とし・・・ 宮本百合子 「山本有三氏の境地」
・・・号外によれば、一日の十二時二分前、東京及び湘南地方に大地震があり、多くの家屋が倒壊すると同時に、四十八箇所から火を発し、警視庁、帝劇、三越、白木屋、東京駅、帝国大学その他重要な建物全焼、宮城さえ今猶お燃えつつある。丸の内、海上ビルディング内・・・ 宮本百合子 「私の覚え書」
・・・ 二 家賃 おそろしい住宅難の折から、きのうきょう厚生省と警視庁との意見にくいちがいが示されている適正家賃算出法の問題は、日本全国の借家人が注意をあつめて成行きを案じていることがらだと思う。 日本全国の人口・・・ 宮本百合子 「私の感想」
・・・巡査が来て彼を過激思想宣伝者、直接行動煽動者として警視庁へひっぱって行く。 どうもこれでは困る。それよりも、初めから落ち着いて宣伝のできるように、どこかに会場を借り聴衆を集めて演説するとする。父の情熱は純粋であり、考えも正しいが、しかし・・・ 和辻哲郎 「蝸牛の角」
・・・そうして間近には警視庁の大建築がそそり立っている。そうなるとあのなだらかな土手が不思議にも偉大さを印象し始めるのである。あの濠と土手とによる大きい空間の区切り方には、異様に力強い壮大なものがある。しばらく議事堂や警視庁の建築をながめたあとで・・・ 和辻哲郎 「城」
出典:青空文庫