・・・――消防夫が揃って警護で、お稚児がついての。あとさきの坊様は、香を焚かっしゃる、御経を読まっしゃる。御輿舁ぎは奥の院十八軒の若い衆が水干烏帽子だ。――南無大師、遍照金剛ッ! 道の左右は人間の黒山だ。お捻の雨が降る。……村の嫁女は振袖で拝みに・・・ 泉鏡花 「山吹」
・・・それからいろいろ広告の山車がたくさん来て、最後にまた騎兵が警護していました。行列はこれからリボリの大通りシャンゼリゼーのほうへ押し出すのだそうです。大通りは非常な混雑で、私も時々コンフェッチを投げつけられました。粗末なカフェーへはいって休ん・・・ 寺田寅彦 「先生への通信」
・・・死減一等の連中を地方監獄に送る途中警護の仰山さ、始終短銃を囚徒の頭に差つけるなぞ、――その恐がりようもあまりひどいではないか。幸徳らはさぞ笑っているであろう。何十万の陸軍、何万トンの海軍、幾万の警察力を擁する堂々たる明治政府を以てして、数う・・・ 徳冨蘆花 「謀叛論(草稿)」
・・・向陽院の周囲には幕を引き廻わして、歩卒が警護している。当主がみずから臨場して、まず先代の位牌に焼香し、ついで殉死者十九人の位牌に焼香する。それから殉死者遺族が許されて焼香する、同時に御紋附上下、同時服を拝領する。馬廻以上は長上下、徒士は半上・・・ 森鴎外 「阿部一族」
出典:青空文庫