・・・キリスト教の精神が死んでいなかったならば、彼等は賃金制度によって人間が奴隷化され、自由競争によって不平等不公平を来たしたこの階級を、むしろ当然のことのように見なし、他を虐げて怪しまない今日の社会制度に対して黙っていられるわけがない。彼等の称・・・ 小川未明 「反キリスト教運動」
・・・日本の労働組合は一生懸命に同じ労働に対する男女の同じ賃金を求めて闘かっているけれども、実際に婦人のとる給料はまだ男よりも少ない。しかし女の子の方が身なり一つにも金がかかる。絹の靴下は一足が八百円もして、それは二ヵ月しかもたないのだから。気儘・・・ 宮本百合子 「明日をつくる力」
・・・「住宅問題の解決や賃金問題の解決はぬきにして」きたるべき選挙に今日の政府は勝算をもっているかもしれない、それだから組閣のはじめに用心深くさまざまの疑獄事件にひっかかりそうな閣僚をさけました。社会党のくされぐあいがあんまりひどかったおかげで吉・・・ 宮本百合子 「泉山問題について」
・・・三十年間にうけた抑圧との闘いによってプロレタリアとして目覚めた一移民労働者が、今や彼の賃金を百ドルから七十ドルに切り下げる恐慌に対して、利害の衝突する二つの資本主義国家間の泥仕合的排外主義に対し、ピオニイルの養成にも熱誠を示すというようなの・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・ 男女が平等ということは、同じ労働に対し同じ賃金ということを当然約束しているけれども、これまでの日本の実状では、同じ職場で同じ部門に働いている男女が必ずしも同じ程度の腕をもっているとは云えない。女は、これまでじきやめてしまうもの、やすい・・・ 宮本百合子 「いのちの使われかた」
・・・紡績業は明治の初め日本の資本主義発展の基礎になって、少女の安い労働でもって作った紡績生産量を、世界市場へ最も安く売り出し、イギリスのように紡績業が発達していると同時に一般の社会生活が進んでいて労働賃金の高いところの生産品と競争した。近代日本・・・ 宮本百合子 「衣服と婦人の生活」
・・・ 憲法のなかで、平等ということがいわれていますけれども、現実に、同じ仕事を、同じ量した労働者には、同じ賃金を支払わねば、ちっとも平等でないわけで、こうした、労働の第一の根本問題があれでは、はっきりされておりません。 また、あそこには・・・ 宮本百合子 「幸福について」
・・・知の通りアメリカのような国、イギリスのような国は、資本家、つまり生産するための手段を自分達がもって、人を雇って時間で働かせて、つくったものは自分達が売って、金は自分がとって、そのなかから働いている人の賃金を払ってその人達を生かしておいてまた・・・ 宮本百合子 「幸福の建設」
・・・全ソヴェトの生産に従事する勤労者の平均賃金は五ヵ年計画の終りにおいて七一パーセント増すだろう。国家計画部は…… 樺色の上着の肩で音波を切りながらドンドン歩いて行って監督は赤布で飾られた舞台のすぐ下第一列へ日本女を待たせ、わきの扉の方から・・・ 宮本百合子 「三月八日は女の日だ」
・・・こういう状態では婦人の勤労というものが一そう社会的に大きい意味を持ってきて、組合が男子の賃金の三分の一で、あるいは半分で働く婦人の地位を改善させようと努力を繰返していることなどは全く当然のことになりました。 憲法が基本的人権といっている・・・ 宮本百合子 「自覚について」
出典:青空文庫