・・・橋と正面に向き合う処に、くるくると渦を巻いて、坊主め、色も濃く赫と赤らんで見えるまで、躍り上がる勢いで、むくむく浮き上がった。 ああ、人間に恐れをなして、其処から、川筋を乗って海へ落ち行くよ、と思う、と違う。 しばらく同じ処に影を練・・・ 泉鏡花 「海の使者」
・・・背嚢の中の雑品や弾丸袋の弾丸がけたたましく躍り上がる。銃の台が時々脛を打って飛び上がるほど痛い。 「オーい、オーい」 声が立たない。 「オーい、オーい」 全身の力を絞って呼んだ。聞こえたに相違ないが振り向いてもみない。どうせ・・・ 田山花袋 「一兵卒」
・・・何よりも荒馬のいきり立って躍り上がる姿にはたとえるもののない「意気」の美しさが見られるのである。 この映画の「筋」はわりにあっさりしているので「馬」を見るのに邪魔にならなくていい。それで、この映画は、まだ馬というものを知らない観客に、こ・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」
出典:青空文庫