・・・ 時節もので、めりやすの襯衣、めちゃめちゃの大安売、ふらんねる切地の見切物、浜から輸出品の羽二重の手巾、棄直段というのもあり、外套、まんと、古洋服、どれも一式の店さえ八九ヶ所。続いて多い、古道具屋は、あり来りで。近頃古靴を売る事は……長・・・ 泉鏡花 「露肆」
・・・――その赤蜻蛉の刺繍が、大層な評判だし、分けて輸出さきの西洋の気受けが、それは、凄い勢で、どしどし註文が来ました処から、外国まで、恥を曝すんだって、羽をみんな、手足にして、紅いのを縮緬のように唄い囃して、身肌を見せたと、騒ぐんでしょう。」・・・ 泉鏡花 「縷紅新草」
・・・資本輸出、租借、商品販売の場合の欺瞞、支配的国民の下に隷従させらるゝこと等によって。」 資本家は、国内の労働者から搾取した利潤以外に、こうして、植民地から莫大な利潤をかき集めてくる。この有りあまって、だぶついている金で彼等は、労働貴族や・・・ 黒島伝治 「反戦文学論」
・・・ 支那では北京政府が二十万元を支出して送金して来た外、これまで米殻輸出を禁じていたのを、とくに日本のために、その禁令をといたり、全国の海関税を今後一か年間一割ひき上げて、それだけを日本へおくることを発表しました。もと支那の皇帝であられた・・・ 鈴木三重吉 「大震火災記」
・・・具体的なことがらについては、君と相談のうえできめるつもりであるが、僕のプランとしては、輸出むきの雑誌にしたい。相手はフランスがよかろう。君はたしかにずば抜けて語学ができる様子だから、僕たちの書いた原稿をフランス語に直しておくれ。アンドレ・ジ・・・ 太宰治 「ダス・ゲマイネ」
・・・そうしてこれらの新日本映画が逆にちょうど江戸時代の浮世絵のごとく、欧米に輸出される。こういう夢を見ることはたいした愛国者でなくてもあまり不愉快なことではあるまい。 こんな空想にふけりながら自分は古来の日本画家の点呼をしているうちに、ひょ・・・ 寺田寅彦 「映画時代」
・・・ 詐欺師や香具師の品玉やテクニックには『永代蔵』に狼の黒焼や閻魔鳥や便覧坊があり、対馬行の煙草の話では不正な輸出商の奸策を喝破しているなど現代と比べてもなかなか面白い。『胸算用』には「仕かけ山伏」が「祈り最中に御幣ゆるぎ出、ともし火かす・・・ 寺田寅彦 「西鶴と科学」
・・・近年日本の紅がインドへ輸出されるのでどうしたわけかと思って調べてみると婦人の額に塗るためだそうだという話をせんだって友人から聞いていたが、実例をまのあたりに見るのははじめてである。 いつか見た「バンジャ」という映画で、南洋土人の結婚式に・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・養蚕が輸入されそれがちょうどよく風土に適したために、後には絹布が輸出品になったのである。 衣服の様式は少なからずシナの影響を受けながらもやはり固有の気候風土とそれに準ずる生活様式に支配されて固有の発達と分化を遂げて来た。近代では洋服が普・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
・・・ 外国の人も日本文化の特長を手早くとりまとめようとするとき、こういう特長をとらえたことは、卑俗な日本の輸出品が、やすい香水入線香にフジヤマ、ゲイシャ、サクラなどという名をつけていたのでもわかる。戦争中、日本の超国家主義者たちは、ヒットラ・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
出典:青空文庫