・・・田園生活などいうても、百姓の辛労を見物ものにして、百姓の作ったものをぶらぶら遊んで見ていたって、そりゃ本当の田園趣味でない。なるほどおれも百姓になろう。百姓は骨が折れるからとばかり思って、とかく本気に百姓しようと思わなかったけれど、考えると・・・ 伊藤左千夫 「隣の嫁」
・・・学校にありがちな大小の事件のために彼の健康には荷の勝った辛労もあったようである。そういう時にどんな態度でどんな処置をとったかは全く私にはわからないが、ただ日記の断片のようなものなどから判断してみると、いつでもおしまいには自分の誠意や熱心や愛・・・ 寺田寅彦 「亮の追憶」
・・・一 下部あまた召使とも万の事自から辛労を忍て勤ること女の作法也。舅姑の為に衣を縫ひ食を調へ、夫に仕て衣を畳み席を掃き、子を育て汚を洗ひ、常に家の内に居て猥に外へ出べからず。 下女下男を多く召使うとも、婦人たる者は万事・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
出典:青空文庫