・・・われには少しもこの夜の送別会に加わらん心あらず、深き事情も知らでただ壮なる言葉放ち酒飲みかわして、宮本君がこの行を送ると叫ぶも何かせん。 げに春ちょう春は永久に逝きぬ。宮本二郎は永久を契りし貴嬢千葉富子に負かれ、われは十年の友宮本二郎と・・・ 国木田独歩 「おとずれ」
・・・て恋の楽しさと哀しさとを知りました、二月ばかりというものは全で夢のように過ぎましたが、その中の出来事の一二お安価ない幕を談すと先ずこんなこともありましたっケ、「或日午後五時頃から友人夫婦の洋行する送別会に出席しましたが僕の恋人も母に伴わ・・・ 国木田独歩 「牛肉と馬鈴薯」
・・・ このお徳は茶の間と台所の間を往ったり来たりして、次郎の「送別会」のしたくを始めた。そういうお徳自身も遠からず暇を取って、代わりの女中のあり次第に国もとのほうへ帰ろうとしていた。「旦那さん、お肴屋さんがまいりました。旦那さんの分だけ・・・ 島崎藤村 「嵐」
・・・ ある夕方、深水がきて、高島が福岡へ発つから、今夜送別会をやるといいにきて、「ときに、例の方はどうしたい?」 と訊いたとき、三吉は、「おれ、病気なんだ」 と答えたきりだった。けげんな顔をしている相手にいくら説明したところ・・・ 徳永直 「白い道」
・・・ みなさまはこの数日来、卒業し、送別会、上級学校の新入生としての歓迎会と、若々しい人生の一つの門から他の門へとおくぐりになりました。その間に、いろいろのことをお感じになっていることと思います。そのさまざまな感じのなかで、きょうに生き・・・ 宮本百合子 「新しい卒業生の皆さんへ」
・・・夜、岩本さんと、村川、松本氏の送別会へ行く。 二十二日 Washington Birthday 一宮氏のところへ行ってかえりに S. C. によって、Aの帰って来たのに送られて Whittier にかえる。 二十三日 日曜日。一・・・ 宮本百合子 「「黄銅時代」創作メモ」
・・・ 文麿公が、娘さんのお嫁に行かれる送別仮装会のために、そのヒットラー髭を買いにわざわざ浅草まで出かけたことを弟の秀麿氏が、賢兄の茶目気として紹介している記事である。 今日の上流の人々の遊びかたの一つの文化上のタイプとしてこの・・・ 宮本百合子 「仮装の妙味」
・・・「吉岡君、なかなかおそいね」「送別会なんでしょう?――三十分や一時間かかるわ」 白い上っぱりをはおった助手がドアをノックして入って来た。片隅で煮えている液体の状態を調べてから出て行った。その薬液は、きまった時間をおいて、慎重に観・・・ 宮本百合子 「風知草」
・・・ 多喜子たちが卒業した女学校の専門部で文明史を教えていた教師の一人が、イタリーの方へ交換教授のようにして行くことになり、その送別会があった。出席した同級の幾人かは、どちらかというと多喜子のように友達に会いたい方が主で、こっそりこちらのテ・・・ 宮本百合子 「二人いるとき」
・・・京都へ移る前、七月に、学士会で送別会が催された。来会者は井上、元良、中島、狩野、姉崎、常盤、中島、戸川、茨木、八田、大島、宮森、得能、紀平の諸氏であったという。これらの中の一番若い人でも大学生から見ると先生だったのであるから、こういう出来事・・・ 和辻哲郎 「初めて西田幾多郎の名を聞いたころ」
出典:青空文庫