・・・本来読本は各輯五冊で追って行くを通則とする。『八犬伝』も五輯までは通則通りであったが、六輯は一冊増して六冊、七輯は更に一冊加えて七冊、八輯は一度に三冊を加えて十冊とした。九輯となると上中下の三帙を予定し、上帙六冊、中帙七冊、下帙は更に二分し・・・ 内田魯庵 「八犬伝談余」
・・・その間に象の狂暴な行為はいろいろに誤り伝えられるが、そのたびごとに少しずつ悪いほうへ悪いほうへと変化して行くのが通則である。 この善良な人間たちは暇に任せて象のその後の行動に注目する。そうして彼らの期待に合うような象の行為を発見する事の・・・ 寺田寅彦 「解かれた象」
・・・たった一台交通規則を無視した車がいたため数十台が迷惑するというのがこういう場合の通則である。「クラブ洗粉」の旗を立てた車も幾台かいた。享楽しながら商売の宣伝になるのは能率のいいことである。 この辺の山には他所の多くの山の概念とは少しばか・・・ 寺田寅彦 「箱根熱海バス紀行」
・・・白日の下に駒を駛せて、政治は馬上提灯の覚束ないあかりにほくほく瘠馬を歩ませて行くというのが古来の通則である。廟堂の諸君は頭の禿げた政治家である。いわゆる責任ある地位に立って、慎重なる態度を以て国政を執る方々である。当路に立てば処士横議はたし・・・ 徳冨蘆花 「謀叛論(草稿)」
・・・「踏んだ方が謝まるのが通則のようだな」「突然、人の頭を張りつけたら?」「そりゃ気違だろう」「気狂なら謝まらないでもいいものかな」「そうさな。謝まらさす事が出来れば、謝まらさす方がいいだろう」「それを気違の方で謝まれっ・・・ 夏目漱石 「二百十日」
・・・一 前条は学問と言う可き程のことにあらず、貴賤貧富に論なく女子教育の通則として、扨学問の教育に至りては女子も男子も相違あることなし。第一物理学を土台にして夫れより諸科専門の研究に及ぶ可し。之を喩えば日本の食物は米飯を本にし、西洋諸国はパ・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
出典:青空文庫