・・・ 中断されたこの時期に、評論集としては、『昼夜随筆』『明日への精神』『文学の進路』などが出版されている。『文学の進路』のほかの二冊の評論集にも、文学についてのものがいくらかずつ収められていた。 この選集第十一巻には、四十二篇の文芸評・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十一巻)」
・・・総選挙という方法は民主の方法であろうが、その方法を通じて反映された今日の日本の現実は、どんなに国内の保守の権力が根づよく、組織的で、日本が民主化して行こうとする進路をふさいでいるかという事実が、外人記者の観察にもはっきり語られたのである。総・・・ 宮本百合子 「一票の教訓」
・・・同じころ、創作のためには非常に無理だった条件のなかで、しかも小説をかく必要があったとき、佐多稲子が「進路」という一篇をまとめたことは、彼女の作家的閲歴としてもプロレタリア文学史にとっても意味ふかいことであった。一人の労働者の若者を主人公とし・・・ 宮本百合子 「解説(『風知草』)」
・・・「進路」でも作者と主人公がくっついていたが、そういうところがあるといね公が云って居ました。直子さんにきょう郵便局のところで会ったら感心しましたと云われ、私は、いろいろ問題があるでしょうがと挨拶せざるを得なかったわけです。季吉さんたちから左向・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ 私どもは、彼等が愛する日本の進路を誤らせるために山積した罪悪を決して忘れることはないのである。 公私逆立った既成政党の腐敗が、忽ち、婦人参政の新しい地域まで悪質な性病のような急スピードで蔓延しつつある。戦争犯罪によって頭株をとられ・・・ 宮本百合子 「逆立ちの公・私」
・・・所謂女らしさと云う曖昧な軛と、極端な家族制度の弊と、男性の無智と不備な社会制度は、進路を展こうとする女性に無限の苦悩を与えて居ります。其上に、長い伝習と、不具な教育とは、女性自らの体力と智力とをも束縛して居ります。従って、現代の日本の女性の・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・は当日の暴風と濃霧によって進路測定に誤差が生じたことを遭難の原因として詳細に地理的に報告した。そして「民間航空発展の貴い人柱」となった人々への哀悼、遺族への慰問の責任を表明した。けれども、当時あの新聞をよんだ一般市民は、阿佐操縦士の妹きくえ・・・ 宮本百合子 「市民の生活と科学」
・・・明治二十年前後の一つのリアクシォンの時代は明治初年の啓蒙家たちの思想の進路に極めて微妙に作用しているのであるが、西村茂樹というひとなどの行きかたは、その一方の典型をなしているものではないだろうか。 そういうような全く文化史風な興味が、祖・・・ 宮本百合子 「繻珍のズボン」
・・・ 一体、なぜこのように自分の進路は、いつもいつも阻止されなければならないのだろう。 彼女は畏怖と失望に混乱した心持で、その断れ目もなく続いている牆壁を観察し始めたのである。 そして、これは、お前達を不仕合わせな目に合わせないため・・・ 宮本百合子 「地は饒なり」
日本は誰のものか。八月十四日の読売新聞で、吉田茂、馬場恒吾の対談の大見出しをみてはげしい反問を感じなかったひとは、一人もなかったろう。「日本の進路」について、何よりも先に「外国人の安住地に」と大見出しがつくような話をする一・・・ 宮本百合子 「日本は誰のものか」
出典:青空文庫