・・・感のとぼしさで人々の心に飢渇を感じさせはじめた時、玄人のこしらえものよりも、素人の真実な生活からの記録がほしいという気持から、女子供の文章の真率の美がやや感傷的に評価されはじめたとき、あらわれて、出版部数の大さでも一つの記録をこしらえた本な・・・ 宮本百合子 「女性の書く本」
・・・だから人は見るだろう、一日の発行部数十数万の『イズヴェスチア』新聞社の正面昇降機の横にまでも、絵入り手書きの『イズヴェスチア』勤労者壁新聞は、いつもぶら下っているのを。 ――こんちは。 振かえりつつ見るとムイロフだ。白いゆるやか・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
・・・これはシーモノフなどの文学作品の発行部数が数百万部というのでも想像される。これらの新しい読者階級は、もとのようにすでに読むことにすれている有識階級の範囲にとどまっていない。男女の農民・兵士・工場の労働者・学生・教師・政治活動家・芸術家、広範・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・日本でも多くの部数を売ったそうですが一九二二年に発行された「この自由」は、上述の女性と職業の問題を骨子としたものです。 純文学的の立場からではなくその小説を一読した女性の一人として、大体の筋の紹介と、簡単な感想を述べたいと思います。・・・ 宮本百合子 「「母の膝の上に」(紹介並短評)」
・・・文化の各部門に亙って代表的な古典だの全集だのが翻訳されて、夥しい部数で一般の日常生活の中へもたらされている。ここでは、文盲退治で字がよめるようになった人たちがいきなり最高の古典にふれて行ってトルストイの小説をよむと同時にゾラをもよむという独・・・ 宮本百合子 「翻訳の価値」
・・・こう云うわけで第一部の五百部と第二部のやや大なる部数とは、未正誤本で世間に出ている。その罪ほろぼしにはファウスト考かファウスト作者伝かを出す時、ファウスト第一部第二部の正誤表を併せて添えることを、富山房に要求してある。 正誤の事を言った・・・ 森鴎外 「訳本ファウストについて」
出典:青空文庫