・・・それはあらゆる社会の部面に下らない者のいることと同じである。けれども、学生は、と総括して、まるで平常は本をよみさえしないように云われた時、何か若い胸に湧き立つ思いを感じる青年たちの数は、下らない者よりは多いのが現実であるし、つまりはそれが学・・・ 宮本百合子 「「健やかさ」とは」
・・・正直なことをいうと感情を害し、自己の生活などを全然客観し得ない、あるままの而も綺麗なよそ行きな部面だけを照し合わせていき合って行かなければならないのは、私にとって苦痛であり、物足りなさが増す一方であった。 私は、それにいろいろ理窟をつけ・・・ 宮本百合子 「大切な芽」
・・・文化・文学が人民の社会生活の共有財であり、その創造は一つの文化生産部面であるというしっかりした認識こそ、人民の民主生活の実際の足がかり、ファクターではないでしょうか。文化を人民の当然の共有財と理解してその民主的効用を求めないなら、いますべて・・・ 宮本百合子 「討論に即しての感想」
・・・そういう部面を専門に扱う役所の考えでは、もし女の収入を今よりも多くしたらば女が永く職業についていて男の妨げになるし、結婚の時がおくれて人口問題が生じるということだそうである。 折角、どっさりの娘さんが職業の場面に身をおくようになっても、・・・ 宮本百合子 「働く婦人の新しい年」
・・・そしてアサの時代は婦人労働者が未組織だったのだということを考え、同時に、現在は組織されていてもまだめいめいの個人生活の苦痛は、個人的な解決にまかされている部面の余り多いことにくらべて、はるかに社会保障の大きい社会主義の社会を思いくらべずにい・・・ 宮本百合子 「文学と生活」
・・・に文学として分散して存在する本質の価値を活かすためには、職業に関してもそこからもたらされる感情の一般性に自然発生にたよるばかりでなく、日本の全体とのいきさつとして、特に或る地方の社会的現実がその職業の部面に加えている調子の具体性を把握しなけ・・・ 宮本百合子 「文学と地方性」
・・・ところが、階級対立が激化し、帝国主義戦争=大衆の大量的死がブルジョアジーにとって必要となってくるにつれ、文化のいろんな部面に神秘主義が現れて来ていた。 今年になって、沢山の婦人雑誌が特別附録として、「迷信」「占ない」などの記事を盛んにも・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・ 世界の歴史が激動し、国々の歴史が波瀾を重ねる間にも、私たちが歴史のために役立とうとすれば、窮極は自分という一個の女性を、最大の可能でそれぞれの道と部面とにおいて人及び女として成長させ、能力を発揮して行くことにほかならないということは意・・・ 宮本百合子 「身についた可能の発見」
・・・十六歳以下の少年少女工は、あらゆる部面に働いているのだが、機械工場、化学工場などに働く少女工は三人に一人、或は二人に一人の割合で病気にかかっているのである。 東京の街をすこし歩けば誰にでも判るように、五百人以上も働いている工場などでない・・・ 宮本百合子 「若きいのちを」
・・・驚くべきことは、統計局でさえも、昭和十八年以降は世間に向って発表すべき正確な統計を、あらゆる部面で持っていないということを告白している。これ一つを見ても、日本の政府は自分達の利益を守ろうとして戦争を強行して行くためには、人民一般の生活に対し・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫