・・・しかしいずれもごく少許を味噌と共に味わえば、酒客好みのものであった。 困ったのは自分が何か採ろうと思っても自分の眼に何も入らなかったことであった。まさかオンバコやスギ菜を取って食わせる訳にもゆかず、せめてスカンポか茅花でも無いかと思って・・・ 幸田露伴 「野道」
・・・ とにかく私にとって、そのような優雅な礼儀正しい酒客の来訪は、はじめてであった。「なあんだ、そんなら一緒に今夜、全部飲んでしまいましょう。」 私はその夜、実にたのしかった。丸山君は、いま日本で自分の信頼しているひとは、あなただけ・・・ 太宰治 「酒の追憶」
・・・而してその本部の人民にははなはだしき酒客を見ざれども、酒に乏しき北部の人が、南部に遊び、またこれに移住するときは、葡萄の美酒に惑溺して自からこれを禁ずるを知らず、ついにその財産生命をもあわせて失う者ありという。 また日本にては、貧家の子・・・ 福沢諭吉 「経世の学、また講究すべし」
出典:青空文庫