・・・ 従来の言説においては私の個性の内的衝動にほとんどすべての重点をおいて物をいっていた。各自が自己をこの上なく愛し、それを真の自由と尊貴とに導き行くべき道によって、突き進んで行くほかに、人間の正しい生活というものはありえないと私自身を発表・・・ 有島武郎 「想片」
・・・ がここでは特に人間教養のための読書に重点をおいて説述したい。それは職能の何たるを問わず、何人もその人格完成を願い精進しなければならないからである。 私は青年学生が人生の重要問題に関する自らの「問い」をもって読書することをすすめたい・・・ 倉田百三 「学生と読書」
・・・ しかし、この問題の解決に、われわれは、現在の幾人かの作家が闘争の現実に馳け足で追いつくことによって文学を推し進めようとするようなそんなケチなところに重点を置いてはならない。労農大衆の中から、芸術家を覚せいさせ彼等を発達させることによっ・・・ 黒島伝治 「農民文学の問題」
・・・において非常に生活的な雰囲気に重点をおいている。従って、部分部分の雰囲気は画面に濃く、且つ豊富なのであるが、この作の総体を一貫して迫って来る或る後味とでも云うべきものが、案外弱いのは何故だろう。私は、部分部分の描写の熱中が、全巻をひっくるめ・・・ 宮本百合子 「「愛怨峡」における映画的表現の問題」
・・・ どの新聞雑誌を見ても、銃後の婦人の力の実質が、この頃は生産拡充への直接間接の参加というところに重点をおかれており、常に欧州大戦当時の欧州婦人の活動が引きあわされている。「今から女工を養成して置くように」という言葉は、すでに去る五月杉山・・・ 宮本百合子 「新しい婦人の職場と任務」
・・・けれども、水野仙子氏の遺著の序文に書かれている文章を見ても、作者が婦人の生活力の高揚ということについては、唯心的に内面的にのみ重点を置いて見ていたことが感じられる。私には、作者有島武郎が自身の内にあった時代的な矛盾によって、一見非凡であって・・・ 宮本百合子 「「或る女」についてのノート」
・・・私生児を育て抜いた所に重点があるよりは、むしろ社会的の束縛から愛する者との間の子を、私生児としての形でしか持てなかった事、更にその子を育てる上に日夜世間の古い型の考えと戦わねばならなかった事、ここに作者は人間性への広い訴えをこめていたのでは・・・ 宮本百合子 「「女の一生」と志賀暁子の場合」
・・・より強壮な肉体の配偶を互に選び合えということに重点をおいて語られている。 これらのことは、結婚の現実に幸福をましてゆく一つの大切な条件であるし、日本の女性たちはこれまであまりその方面の知識や関心が無さすぎた。そのために永い歴史の間で女性・・・ 宮本百合子 「結婚論の性格」
・・・は全部が嘘を書いているとは云えないとしても、現れて来る何人かのコムソモールの生存重点を、彼等の性生活、而も病的に拡大された性関係の混乱にだけ置いていることに、作家は計らず自身の階級的立場を曝露している。 パンテレイモン・ロマノフは、ソヴ・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・ 達治さんも同じ方角でしょう、そちらに重点がおかれているらしいから。磁石は手に入るかどうか。天文の本は紀さんの意見では非実用の由です。 実に特別な年末ですね。 この家での生活は、子供が三人になったら又一つ様相変化して大変なもので・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
出典:青空文庫