・・・それは赤く塗ってあり、甲板に鉄格子が出来ている。追放や苦役に決った囚人がそこに入れられて輸送されているのであった。舳先に歩哨の銃剣が燭火のように光っている。艀舟の中は静寂で月の光が豊かに濯いでいる。ゴーリキイは、昼間の疲れと景色の美しさに恍・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・ 模型といっても、本物の牢屋の鉄格子、腰かけ、みんなもとの牢屋からとって来たものだ。ほんの一坪位の厚い壁の間に、ボンヤリ、ローソクの光に照らされながら髪の伸びたやつれた革命の同志が、それでも小机に向って本をよんでいる。足を見ろ、足枷だ。・・・ 宮本百合子 「ロシアの過去を物語る革命博物館を観る」
出典:青空文庫