・・・積極的、消極的両美の並立すべきがごとく、これもまた並立して各自の長所を現わすを要す。主観を叙して可なるものあり、叙して不可なるものあり。客観を写して可なるものあり、写して不可なるものあり。可なるものはこれを現わし不可なるものはこれを現わさず・・・ 正岡子規 「俳人蕪村」
・・・けれどもその欠点は多くの場合、彼等の長所を裏から見た場合でございます、私が今までに感じた事は、直覚の鈍い事、自ら与えられた権利に捕われて居る事、余り物質的なことと、群集的なこととでございましょう。 彼女等の引緊った表情と、軽快な容姿と比・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・の活動にあった弱点から押しても、現在文学的野望に燃える多数の作家たちが、プロレタリア文学における独特な長所を発見しようと志し、同時に、芸術作品の構成の豊富さ、諧調における明暗の濃さ、力感のつよさなどを追求するのはむしろ必然だと思う。われわれ・・・ 宮本百合子 「新年号の『文学評論』その他」
・・・同志林の才能や長所その他についての「考察や反省は今迄も指導部でされてきた。今後は一層強力に一般的になされるだろう」云々と云っている。 私は順次、第一の批判からとりあげてそれを正しく自己批判に摂取すると同時に、プロレタリア文学運動全線との・・・ 宮本百合子 「前進のために」
・・・その長所と欠点とにおいて、著者は全く自己の真心を披瀝しており、読者の人間性の皮膚にじかにふれんとする情熱を示している。その意味で、解説的、入門的な本の書きかたにおける新たな親しみ深さ、人柄の流露のタイプを提出していると思う。 序文による・・・ 宮本百合子 「新島繁著『社会運動思想史』書評」
・・・一人一人の人間として見れば誰しも長所と欠点とがある。そういう人間が集った一つの運動的な部隊としての価値が、ただ雑多な人間の寄せ集めの総和としてだけの価値を持つのでなく、別個のより高い価値を作り出すところにその運動の本質が備えている歴史的な新・・・ 宮本百合子 「ヒューマニズムへの道」
・・・それやこれやを合わせ考えれば、この評論集はその長所においても欠点においても、今日の読者にとっては既に日本のプロレタリア文学史の上の一古典となっていると思われる。例えば、初期の左翼芸術理論に深甚なる影響を及ぼしたプレハーノフやデボーリンの理論・・・ 宮本百合子 「『文芸評論』出版について」
・・・ 十、その長所と短所 今まで読んだところでは長所が沢山目に附いて、短所と云う程のものは目に附かない。 森鴎外 「夏目漱石論」
・・・ですからあなたの長所が平生の倍以上になったのがどんなにか嬉しゅうございましたでしょう。 男。なるほど。旨くたくらんだものですね。しかしやっぱり女の智慧です。 女。なぜでございますの。 男。でも手紙を一本落しなすったばかりで、せっ・・・ 著:モルナールフェレンツ 訳:森鴎外 「最終の午後」
・・・七 私は人の長所を見たいと思っている。そうしてなるべく多くの人に愛を感じたいと思っている。しかし私には思うほどにそれができない。 私が愛を感じている人の短所は、同情をもって見ることができる。時にはその短所のゆえに成長が早・・・ 和辻哲郎 「転向」
出典:青空文庫