・・・三畳と四畳半と六畳と、三間ある。間取りもよいし、日当りもわるくないのだ。十三坪のひろさの裏庭がついていて、あの二本の紅梅が植えられてあるほかに、かなりの大きさの百日紅もあれば、霧島躑躅が五株ほどもある。昨年の夏には、玄関の傍に南天燭を植えて・・・ 太宰治 「彼は昔の彼ならず」
・・・という節廻しから拍子の間取りが、山の手の芸者などには到底聞く事の出来ぬ正確な歌沢節であった。自分はなつかしいばかりでない、非常な尊敬の念を感じて、男の顔をば何んという事もなくしげしげ眺めた。 さして年老っているというでもない。無論明治に・・・ 永井荷風 「深川の唄」
・・・かと思うと、自分はいつか岡山へ行ッていて、思ッたよりも市中が繁華で、平田の家も門構えの立派な家で、自分のかねて思ッていたような間取りで、庭もあれば二階もあり蔵もある。家君さんは平田に似て、それで柔和で、どこか気抜けがしているようにも見え、自・・・ 広津柳浪 「今戸心中」
出典:青空文庫