・・・しかもその記実たる自己が見聞せるすべての事物より句を探り出だすにあらず、記実の中にてもただ自己を離れたる純客観の事物は全くこれを抛擲し、ただ自己を本としてこれに関連する事物の実際を詠ずるに止まれり。今日より見ればその見識の卑きこと実に笑うに・・・ 正岡子規 「俳人蕪村」
・・・それに関連する創作方法の問題として、リアリズムの実践も深めなければならなくなって来るのである。 平和が齎されたとき、一つの文化的な記念として戦線から兵士たちが家郷に送った家信集が、是非収録出版されるべきである。今日、所謂高級ではない雑誌・・・ 宮本百合子 「明日の言葉」
・・・その困難な実践をとおし、次代の建設との関連において、恋愛・結婚観も徐々に高められて今日に至っていることを私たちは見落してはならぬと思う。 階級的な男女の結合というと、すぐコロンタイの「赤い恋」が話題にのぼったのは、かれこれ七年くらい前の・・・ 宮本百合子 「新しい一夫一婦」
わたしたちが文学を愛するこころもちの最も純粋な情熱は、いつも、その作品をよみ、それを書いた作家に心をひかれる人々自身の、いかに生きるか、の課題に関連している。過去の文学作品、また今日かかれている作品をよみ、作家について研究・・・ 宮本百合子 「あとがき(『作家と作品』)」
・・・けれども、どういう社会現象も当時互に関連して動いていた諸事情の具体的な現実を綜合してしらべてみなければ、真実はつかめない。一九三三年代の所謂「政治的偏向」も、それに対する殆ど痙攣的だった保身的批判理論も、どちらも、十五年たったきょう顧みれば・・・ 宮本百合子 「解説(『風知草』)」
・・・ 友代の情熱、ユーモア、人間らしい親しみは、いずれも人柄として演じられて成功をおさめているというところも、以上のこととの関連で、芸術上の問題として興味がある。演じいかされているために、脚本にあるそういう本質の課題がつきつめられぬまま・・・ 宮本百合子 「「建設の明暗」の印象」
・・・五ヵ年計画実現に関連して、或る産業に従事する労働者の独特な生活に起った独特な社会的変化などは、こういう現役兵=コムソモール出の労農通信員によって、最も自然に実感をもって把握され文学的作品の中に描写されつつある。 これこそ、本然的な芸術に・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・にはなかった奇怪なモデル出入りが発生した。その代表的なものは井上友一郎の「絶壁」に関連する事件であった。一般の読者は自然にあの一篇の小説をよんだ。そして、なぜこの節は「晩菊」にしろ、女の肉体の老いと社会的野心或は金銭の慾のくみ合わせが、その・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・ 自分は茲では文学的表示としての新しき感覚活動が、文化形式との関係に於ていかに原則的な必然的関連を獲得し、いかに運命的剰余となって新しく文学を価置づけるべきかと云うことについて論じ、併せてそれが個性原理としてどうして世界観念へ同等化し、・・・ 横光利一 「新感覚論」
・・・ さてそのような観点から麦積山の写真をながめていて、まず痛切に感ずるところは、ここにある魏の時代の仏像がいかにも推古仏の源流らしい印象を与えること、そうしてそれが塑像であることと何らか密接な関連を持っているらしく見えることである。・・・ 和辻哲郎 「麦積山塑像の示唆するもの」
出典:青空文庫