・・・従って、伊吹山は、この区域の東の境の内側にはいっているが、それから東へ行くと降雨日数がずっと減る事になるわけである。 何ゆえにこのような区域に、特に降水が多いかという理由について、筒井氏の説を引用すると、冬季日本海沿岸に多量の降雨をもた・・・ 寺田寅彦 「伊吹山の句について」
・・・あらしのせいかと思って聞いてみると、ことしの春の雪に折れたのだそうである。降雨のあとに湿っぽい雪がたくさん降って、それが樹冠にへばりついてその重量でへし折られたそうである。こういう雪の山路に行き暮れて満山の雪折れの音を聞くということは、想像・・・ 寺田寅彦 「軽井沢」
・・・例えば明日中某々地方に降雨あるべしというがごとし。これらの予報が普通世人にとりて実用的価値を有するための条件は、思うに「その現象のために利害を感ずべき個人あるいは団体の利害を感ずる範囲領域の大きさに対して、予報の指定する範囲の大きさが比較的・・・ 寺田寅彦 「自然現象の予報」
・・・なかんずく本邦学者の多年の熱心な研究のおかげで颱風の構造に関する知識、例えば颱風圏内における気圧、気温、風速、降雨等の空間的時間的分布等についてはなかなか詳しく調べ上げられているのであるが、肝心の颱風の成因についてはまだ何らの定説がないくら・・・ 寺田寅彦 「颱風雑俎」
・・・こういう天候で、もし降雨を伴なわないと全国的に火事や山火事の頻度が多くなるのであるが、この日は幸いに雨気雪気が勝っていたために本州四国九州いずれも無事であった。ところが午後六時にはこの低気圧はさらに深度を強めて北上し、ちょうど札幌の真西あた・・・ 寺田寅彦 「函館の大火について」
・・・もちろん降雨の時刻と人々の外出時刻との関係でこの影響はいろいろになりうる。また百貨店閉場中の時間の降雨は問題の売り上げ高には関係しない。それにも係わらず、多数の日数を含む統計的素材を統計的に取り扱う場合には、これらの個々の場合は問題とならず・・・ 寺田寅彦 「物質群として見た動物群」
・・・ 儒者が地獄極楽の仏説を証拠なきものなりとて排撃しながら、自家においては、数百年のその間、降雨の一理をだに推究したる者なし。雨は天より降るといい、あるいは雲凝りて雨となるというのみにして、蒸発の理と数とにいたりては、かつてその証拠を求む・・・ 福沢諭吉 「物理学の要用」
・・・京都にいた間、また、九州に来てから別府、臼杵などにいた間、塵をしずめる打ち水となる程度の降雨に会っただけで、ために予定を変えるような目には遭わなかった。日向で青島へ廻った日、鹿児島で一泊したその翌日、特に快晴で、私達は、世にも明るい日向、薩・・・ 宮本百合子 「長崎の印象」
出典:青空文庫