・・・ 恋愛において個性が燃え立つのは、恋愛があらゆる場合、その個性の属する社会層の思想、習慣等の集約的表現だからである。様々の階級的感情、社会の一般的情勢に制約されつつ、或る者は恋愛をモメントとして自己の階級から脱離し、或る者は一層かたくそ・・・ 宮本百合子 「ツルゲーネフの生きかた」
・・・そして、その作品にあらわれる主人公たちがそれぞれ多数のものの集約的な人格化であり、歴史の局面へ積極的に働きかけようとする時代の典型であるという文学の世界の現実で、広汎な読者の生活に結ばれてゆくものであろうとした。 この文学の動きの方向で・・・ 宮本百合子 「平坦ならぬ道」
・・・蒙古における敗戦前の日本人官憲の混乱、主人公の不安な感情をテーマとする人間の歴史的像のなかへ、もっと集約して折りたたまるべきである。その背景とし、侵略者としての本質をかたるエピソードとして、土方という隊長の階級的タイプを一貫して描きつつ、主・・・ 宮本百合子 「予選通過作品選評」
・・・M氏程まだ充分イギリスを内臓へ吸収せぬ後輩、あるいははるばる官費で英国視察に来た連中が時間と語学の不足から彼のもとへ駈け込み、集約英国観察供給方を依頼する。 時に例えば某学校長のような訪問客さえある。校長君の意見によると英国を英国たらし・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
出典:青空文庫