・・・信仰の勿体なさを深くするため、印象づけるため、すべての流行する信仰建築は、きっとこういう途中の難関を計算に入れている。善光寺の山門までの長い単調な爪先のぼりの道中は何のためだろう。いじらしい人間の心を食い、無事息災をいのる心でたつきを立てる・・・ 宮本百合子 「琴平」
・・・現実の難関を打開しようとする行動主義文学の不可能性をつく提言は、公式主義、機械主義として迎えられた。而して、行動主義文学、能動精神の声は、単に、『文学界』の芸術至上的、抽象的風潮への解毒剤として一般に迎えられたばかりでなく、プロレタリア文学・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・けれども、科学的な知識は益々大切である。難関をのりこす精神力も、肉体が土台である。 女靴一足二十円 二十円と価のきまった女靴は、靴屋に云わせれば冬物なんかお穿けになるようなものは出来ますまい、という話である。・・・ 宮本百合子 「女性週評」
・・・ 私達の人生には、常に難関というものがある。苦境というものなしの人生は一人の人にも可能とされていない。私達がそれらの難関と苦境とに処して何かの希望と方向とを発見し、それを凌ぎ前進して行けるのは何の力によってであろうか。それはただ私達が自・・・ 宮本百合子 「青年の生きる道」
・・・ 米国のように、生活の緊張した場所では、最も右のように経済的事情が、若者の難関となることが多いでありましょう。けれども、又異った故障が起ることがある。それは、或る研究なり、職業なりに従事している婦人が、或る異性に愛され、愛した場合です。・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
出典:青空文庫