・・・博士は、ときどき、思い出しては、にやにや笑い、また、ひとり、ひそかにこっくり首肯して、もっともらしく眉を上げて吃っとなってみたり、あるいは全くの不良青少年のように、ひゅうひゅう下手な口笛をこころみたりなどして歩いているうちに、どしんと、博士・・・ 太宰治 「愛と美について」
・・・リンカーンはたった三冊の書物によってかれの全性格を造り上げたという記事が強く自分を感動させたのであったが、この事実は書物の洪水の中に浮沈する現在の青少年への気付け薬になるかもしれない。「リンカーン伝」でよびさまされた自分の中のあるものが・・・ 寺田寅彦 「読書の今昔」
日本の民主化と云うことは実に無限の意味と展望を持っている。 特に一つ社会の枠内で、これまで、より負担の多い、より忍従の生活を強いられて来た勤労大衆、婦人、青少年の生活は、社会が、封建的な桎梏から自由になって民主化すると・・・ 宮本百合子 「合図の旗」
・・・婦人の安い労働賃金、青少年の安い労働賃金、それはいつも成年男子の賃金の安定を脅かして来た。失業の予備軍となっている。しかしそういう点で共通の幸福を守ること、その協力の意味を理解しない男の人たちは、組合が要求するから仕方がないようなものの、女・・・ 宮本百合子 「明日をつくる力」
・・・たらんとしているのであるけれども、特に、青少年、婦人にとって、この選挙は、深い深い意義をもっていると思う。国民の中で、最も無権利である女性と青年たちが、戦争の最もひどい犠牲となった。働き盛りの男子が、赤紙一枚で数百万人も殺されたということは・・・ 宮本百合子 「現実の必要」
一九五〇年度は、青少年の犯罪が一般の重大な関心をひいた。 青少年の犯罪は、ふっとそんな気になって、ついやられてしまう。それが習癖にもなる。そのついやることは、きょうの社会のわれ目が巨大であり非条理であるに応じて、大きい・・・ 宮本百合子 「修身」
・・・ 青少年を護る 青少年工がこの頃の景気の中で、とかく誘惑に負け、その青春を蝕ばまれるのをふせぎ又指導するために、厚生省が産業報国の機関を動員して、優良会員数名ずつを行動隊に組織し、工場地帯、玉の井、亀戸その他の・・・ 宮本百合子 「女性週評」
・・・労働基準法では少年の労働について保護的な規定をもうけているし、労働組合が青少年婦人の待遇改善を要求している。生活必需品の値上げについて賃上げ要求をして七百円から千五百円になり、千八百円ベースの今日、物価はぐっと高くなり公定価も上って、とても・・・ 宮本百合子 「女性の歴史」
・・・婦人の問題、そしていまの日本のおそろしい青少年の問題。すべてが、現在の社会の矛盾、或いは、ひびわれの間から発生している。いまのままの社会状態では、われわれが平安に生きることのできる日は一日もない。これは、こんにち、占領下の日本に特権というも・・・ 宮本百合子 「戦争はわたしたちからすべてを奪う」
・・・ 同じ頃にやはり新聞が、青少年男女の産業戦士の病気になる率が急騰していることを報じていたことは、その上野駅頭の大群集の写真との対照で、今なお生々しく私たちの感銘に刻まれていると思う。去年の春ごろ、同じような荷物に漠然とした人生への希望を・・・ 宮本百合子 「列のこころ」
出典:青空文庫